己を奮い立たせる青道。
対する打席には兄が立つ。
「────⋯⋯」
その光景に、わたしは息を呑んだ。
兄の姿が。一也くんの姿が。ゆらりと揺らめく。焦げつく太陽の光をその身に受け、──陽炎のように。
──ああ。
なんて、美しい。
兄のバッドが川上先輩の球を捉えた打球は、無情にもセンターの頭上を超える。ランナーが帰ってくる。帰ってきてしまう。
兄が掲げた拳が天をつく。
それをみた瞬間。周りの音がぐわんと歪んだ。まったく耳に入ってこない。陽光に揺らいでいた景色が、じわじわと濡れ滲んでいく。
どうして。どうして。
信じられない。
あとひとつ。
あと、たったひとつだったのに。
皆が焦がれ続けた夢の舞台まで、あとアウトひとつで手が届いたのに。ここで終わりだというのか。これで終わってしまうというのか。
あまりにも──残酷だ。
膝上で握った拳の上に、ぼたぼたと涙が落ちる。止まらない。見届けなければ。こんな死闘を繰り広げた選手たちを、しっかりと見届けなければ。そう思うのに、次から次へと溢れる涙が視界を遮り邪魔をする。
一也くんはどこにいるのだろう。どんな顔をしているのだろう。三年生は。監督は。兄は。
見えない。
溢れて溢れて、見えない。
逆転サヨナラ。
劇的な幕切れ。
これが、──わたしたちの夏の終わりだった。
バスの中でも、寮に戻ってからも、三年生の涙が止まることはなかった。
部員の前で泣くわけにはいかない。三年生の前で泣くわけにはいかない。
重みが違う。懸けてきたものが違う。
同じように涙を流すことが許されない気がして、スタンドを離れた瞬間からわたしは必死に唇を噛み締めた。泣き続ける先輩たちにかける言葉など、誰も持ち合わせていなかった。
実感が持てない。
さっきまで一緒にプレーしていたこのひとたちは、同じ場所で生きてきたことひとたちは、もう。
──明日からはいないのだ。