14.夜の吐息の落ちぬ間に


「っ、⋯⋯筋肉が、っむり見れないかっこいい」
「その指の隙間は」
「⋯⋯だって見ないともったいない」
「言ってることめちゃくちゃだぞ」


 十度ほどだけ開いた人差し指と中指の隙間から、再度彼を見上げる。

 見上げて、悶絶した。


「〜〜〜〜〜っむりむり、直視不可能、なんでそんな身体してるの」
「いや、だからその隙間は」


 わたしの腰を膝で跨ぐようにしている彼は、呆れの中に笑みを混ぜながら、首元でたごまっていたわたしのシャツに手を掛けた。そのまま器用に頭を抜かれる。

 無防備な胸元を何となく腕で覆う。その腕をそっと掴み布団に縫いとめながら、わたしの口を塞いだ。

 腰回りを指先が撫で、するりと手が入り込む。背面に腕が回り僅かに腰が持ち上がった一瞬の隙に、ズボンが臀部をすり抜けた。そのまま足先までをひと息に通り抜ける、鮮やかな手捌きだった。


「ん、⋯⋯ふ、ぁ」
「⋯⋯っは、」


 蕩けるような口づけに、胸の先端への優しく甘い刺激。もとより高い体温が、さらに上がるのを感じる。意識が上ずる。

 どこか夢を見るような心地だった。

 だから、彼の指が太腿の内側をゆっくりと辿り足の付け根を彷徨っていることを自然と受け入れていて、下着の上から秘所に触れられるまで意識が向かなかった。


「──ひゃ、っ、んぅ」


 出掛かった嬌声さえ、彼の口内にのみ込まれる。

 触れられて初めて気がついた。
 わたしのそこは、下着を軽く押し付けられるだけで自覚出来るほど濡れそぼっていた。

 そのことが羞恥を煽る。

 それによりさらに溢れた蜜が、より彼を深みへ招こうとする。蜜により滑る下着の上から、彼の指が閉じた花弁をなぞる。何度か繰り返したのち、その指が、より敏感な花芽を捉えた。

 
「────っ!!!」


 言いようのない感覚が駆け上がる。背筋がしなり、びりびりと脳が痺れた。これは、いや、これも、快楽だ。纏まらない思考で、本能的に理解する。

 行き場を求め、必死に彼の背にしがみつく。

 
「名前⋯⋯そんな可愛い反応すんな、俺にも我慢の限界っつーもんが」
「ゃ、ちが、⋯⋯っぁん」


 下着の隙間から伸びた指の直接的な刺激に、自分のものでないような声が漏れる。咄嗟に自身の人差し指を唇の隙間に埋め込み声を堪えた。


「聞かせて、名前」

 ふるふると首を振るわたしの視界は、心なしか滲んでいる。

「⋯⋯名前」
 
 今度は耳元で甘く囁くように。語尾を少し上げ、問いながらもいざなうような、酷く甘美な響きで。

 こんなの反則すぎる、と思った瞬間、蜜をたっぷり纏った指の腹が、花芽を優しく押した。そのまま擦るようにくるくると動く。


「あっ、ん、やぁ、っ」


 突き抜ける快楽に、食んでいた人差し指はとうに外れていた。下着が足元にはらりと落ちる。合わせて彼も下服を脱いだようだった。

 膝裏を持ち上げられ、下肢が大きく開かれる。こんな格好恥ずかしい、と口にするより先に、花弁の入り口を動いていた別の指が、つぷ⋯⋯と隙間を開く。


「⋯⋯我慢、すんなよ」
「ぁ、⋯⋯っぁ」


 初めて与えられる内側からの圧迫感。たっぷりと濡れているおかげで擦れる痛みはないけれど、閉じられていた箇所を徐々に開かれる違和感は拭えない。

 しかしそのたびに彼が花芽を撫で、違和感が快楽で上塗りされていく。

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