そうしながら少しずつ、奥へ奥へと進んでいく。やがてすべてが埋まると、彼から聞いたことのない色香を孕んだ吐息が落ちた。それにすら魅惑され、同時に幸福感が満ちて、彼の首筋に縋りつく。
「ん、ど、した?」
「しあ、わせで⋯⋯潰れ、ちゃいそうで」
「頼むから煽んな⋯⋯名前のなか、っマジで、やべえから」
「、ん」
鼻先を合わせ彼に見つめられる。馴れるまで動かずにいてくれるつもりなのか、そのままで彼は言葉を継いだ。
「いいか? 幸せなのは俺のほう。お前のこと好きなのも俺のほう。こんくらいで潰れてたら、お前この先ずっと、ぺっちゃんこだぞ」
「ふふっ、やだ」
ついでに額も合わせて、彼は目尻を下げた。
抱き合ったまま口づけを繰り返していると、次第に痛みが和らいできた。わたしのなかで時折びくんと波打つ彼を感じることも出来る。
息が整うのを待って、彼はゆる、ゆると動き始めた。随分辛抱させてしまった。と、頭の片隅で辛うじて思う。
止めどなく落ちる蜜が彼の動きを誘う。わたしの表情が苦痛に歪まないことを確認しながら、彼は少しずつ動きを大きくしていく。
「っ、あ、⋯⋯ん、」
自身から漏れる吐息が甘くなっていくのがわかる。それは、彼の動きの大きさに比例しているようだった。
たっぷりと甘さが含まれたところで、深く繋がってからというものずっと抱き締めてくれていた彼の身体が、はじめて離れた。
上体を起こした彼を見上げて、その艶然さに胸の奥がぎゅっと締め付けられた。共鳴するようにわたしのなかも締まる。
「っ、そんな、締めんな」
「かずやくんの、っせい、⋯⋯ゃ、ん」
体位が変わったことで、より奥まで彼が届く。抱き締めてくれていた腕が離れてしまった寂しさが、身体の髄を走る快楽に紛れる。頭元のシーツを握りしめる。
腰を両手で掴み、彼はぐぐっと奥に押し付けた。そのまま離れずぐりぐりと押され、絶え間ない刺激が走る。
「っや、ひぁ、そ、こ、⋯⋯っだめ、ぇ」
あまりに強い刺激に、溶け出しそうな頭に、意識が持っていかれそうになる。わたし、なにして。わからない。でも気持ちいい。きもちい。一也くん。わたし、
「──っ、名前、飛ぶな」
「ゃあ、んん、んっ、⋯⋯ふ」
再開された律動に、彼の声に、意識が引き戻される。繋がっているところからは淫らな水音、衣擦れの音、互いの荒い呼吸。
優しく弄られる双丘の先端が切ない。
お腹の奥の疼きが苦しい。
塞がれた呼吸の行き場がない。
熱い。熱い。
何も考えられない。彼に抱かれていることしかわからない。
もうこれ以上は、──もたない。
「名前、っ悪ィ、お前可愛すぎ⋯⋯俺も限界」
「な、に⋯⋯あ、ぁぁっん、ふ、ぁあ!」
わたしが音を上げる直前だった。
一体何を謝られたのかもわからぬまま、激しく奥に打ち付けられる。ちかちか。飛び交う意識。彼が短く息を吐いた直後、荒っぽく唇が重なる。同時にわたしのなかの彼が、短い痙攣を繰り返す。
「⋯⋯っは、ぁ、⋯⋯ぁ」
「っ、⋯⋯は、名前、生きてるか?」
ふふ、何それ、とつっこむ余力などなく、ふるふると頭を振ってみせる。震えて力の入らぬ身体を、彼は抱き締めてくれた。
「ごめん。これでも、セーブした、と思う」
何を言ってるんだろう。その歯切れの悪さは何ですか。これでセーブしてたのだとしたら、身体がいくつあっても足りない。
と、答える力も残っておらず、再度ふるふると頭を振ってみせる。
彼は苦笑いを零して、乱れて頬に掛かった髪を掬った。ずる、と彼を抜かれる瞬間さえ肌が痺れる。
身体を動かすことが出来ず横たわったままのわたしの隣に、彼は身体を横たえた。顔の横に放り出されているわたしの手を、優しく包んでくれる。
安心。幸福。温もり。
満たされた心地で瞼を閉じる。
意識がぐんと遠ざかった。