流れる星の落つところ

 それから二年の月日が流れた。
 時薬とはよく言ったもので、名前が一人で寝れる日も増えてきていた。それでも悟の部屋を訪れることはままあり、変わらず悟の腕の中で眠る。

 この頃の悟は、よく戦っていた。
 呪いと、ではなくて。名前に手を出しそうになる自分と、だ。

 名前の体躯は随分と女性らしいやわらかみを帯び、随所に艶やかさが滲むようになった。頬にかかる髪のひと束。唇の隙間から漏れる寝息にさえ、悟は劣情を覚えた。

 気づいていた。
 いつしか自分が名前に対して、特別な想いを抱いてしまっていることに。

 笑顔を見ると、胸のあたりがあたたかい。拗ねたときに膨れる頬も、不意に物憂げに伏せられる睫毛も、悟に縋って眠る指も。

 すべてが心底愛おしかった。

 愛おしくて、──苦しかった。

 しかし、名前は違う。悟を信頼しきった穏やかな寝顔を見ていると、自分が如何に異性として意識されていないのか、嫌でもわかった。

 大切だった。

 何よりも守りたい存在だった。

 笑顔を曇らせたくなかった。名前に降りかかる禍事が、すべて悟の身に起こればいいと思った。だから、悟が名前を傷つけるわけにはいかない。その一心が、欲に溺れそうになる悟を、辛うじて留めていた。

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