流れる星の落つところ


 悟の欲の出口からは既に若干の透明な液体が滲んでいて、名前はそれを指先で遊んだ。


「……余裕じゃん」
「ひゃ、ん……っ」


 陰核に触れられ、名前の腰が跳ねる。悟は熟知している。如何程の力加減で、細やかなどの箇所を、どんなふうに苛めれば、名前が悦ぶのかを。

 絶妙な触れ方に、足先から頭頂までを快楽が駆ける。気持ちいい。身体は、脳は、安易にその先を求めてしまっている。名前は切なく眉根を寄せ、悟を見上げた。


「や、だ、っそこ、きちゃう」
「イかせたくてやってんの」
「あ……っ、んあぁっ」


 ほらこれだ。こんなにも容易く絶頂に導かれてしまう。息を荒げ問答無用の快楽を受け止めている名前に、悟は問う。


「僕のも気持ちよくして?」


 否、問うているようにみせて、これは一種の緩やかな強制だ。まったく強要感を滲ませないくせに、有無を言わさぬ従順の要求。

 口元に差し出された屹立を、名前は小さな口で迎える。悟の指先が「いいこ」とでも言うように、名前のこめかみを撫でた。


「ん……、ん、ぅ」
「……うん、じょーず」


 口内で質量を増した屹立に、名前は舌を絡める。悟の腰が緩やかに前後する。大きい。苦しい。しかし悦びを感じずにもいられない。

 じゅ、と濡れた音が響く。
 弧を描いた悟の唇。サングラスの奥のあの瞳にこの姿を見下されていると思うと、それだけで名前からは更に蜜が溢れた。


「腰、動いてるよ。もう欲しいの?」
「……っ、」
「言ってごらん」


 この人は、と名前は内心で毒づいた。こんなに深くまで咥えさせておいて、言ってごらんときた。喋れないとわかっているくせに。


「ごめんごめん、そんな可愛く睨まないの」
「はぁっ……ほんとに、いじめっ子」
「なに、褒め言葉?」


 口内から引き抜かれ、名前の喉が小さくケホ、と音を立てた。

 ぐっと両脚を開かれる。顕になった秘部に、悟の視線が注がれる。名前は顔を背けた。


「とろっとろじゃ、ん」
「んんンぁ……っ!」


 容赦なく一息に最奥まで埋め込まれる。悟を受け入れる準備を存分に整えていた名前の膣内は、待ち望んでいたかのように、ぎゅぎゅっと悟の屹立を締め上げた。


「名前いま、軽くイったでしょ」
「や、……っあ、ぁ、ん」


 わかっているなら少し待ってほしいところだが、悟はむしろ、ここぞとばかりに奥に打ち付ける。反射的に逃げようとした腰を、悟の大きな手がしっかりと押さえた。

 弱い角度で腰を支えられ繰り返される抽挿に、名前は無意識に手のひらで空を掴むようにして快楽の行き場を探す。

 探すのだが。見つからない。
 
 また、昇りつめてしまう。

 すぐそこに絶頂の再来を感じ、両下肢がふる、と震えた、その刹那だった。


「まだだーめ」


 悟は不意に動きを止め、名前から絶頂を奪った。与え。奪う。生殺与奪の権利はすべて悟にあるのだと言わんばかりの振る舞いだった。

 屹立を抜かれたかと思うと、くるっと身体を反転させられる。こういう鮮やかな手捌きは呪術師だよなあ、と毎度変なところに感心を覚える。

 臀部を持ち上げられる。
 濡れそぼった秘部のみならず後孔までもが顕になり、名前は頬を赤らめ、頭を捻り悟を見上げた。

 
「さすがに、恥ずかしい……っこんなに明るいのに」


 白昼堂々。恥ずかしいところを見つめられ、名前はかぶりを左右に振った。


「安心して、いい眺めだよ」
「ひ、ぁ……ぁあ、んん!」


 再び挿入され、名前の背が撓る。その光景に悟はぺろ、と唇を舐めた。

 背側から乳房を揉まれ、時折その先端を愛撫される。花芯が痺れる。何度も最奥を穿たれ、しかし絶頂はぎりぎりのところで必ず奪われる。名前から落ちる嬌声はとめどない。


「や、も、……悟せんぱ、っ」
「ん、なあに」
「イッても、いい?」


 それは懇願だった。
 苦しい。切ない。はやく、はやく。与えてほしい。こんなに激しくされて、それなのに寸止めを繰り返されるなんて。これ以上無理だ。

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