紅葉畑の紅梟
次の日の、秋麗な早朝。
美しく吹く秋声が響く。
【試合終わった途端帰るとか!】
【木兎くん、お前にやっと会えるて楽しみにしてたのに!】
【もー! ほんとマジお前!】
【明日の朝、絶対行けよ!】
【あと今度みんなで焼き肉行くぞ!】
【苗字の奢りだからな!】
「もー、お小言多いよー」
目覚ましを止めた画面。光るランプ。届いていた大量のメッセージ。
どうやって家に帰ったのか、どうやってベッドに潜り込んだのか。覚えていない。
ただ、熱に浮かされた頭が。
頻りに彼の姿を繰り返した。
何を考えていたのか、起きたら額に冷えぴたがくっついていた。浮かされた熱を下げようとしたのか。こんな薄い冷えぴたで。
ほんとうに何を考えていたのか。
*
かさり、落ちた紅葉が鳴いた。
彼の訪れを告げる音、愛しく。
「っ! 名前ちゃん!」
「こーた、ろっ?!」
びゅんと飛ぶように飛んできた光太郎。凄まじい勢いだ。このままだと確実に、確実に命が危ない。
しかし、避けるなんて選択肢を選ぶ間もなく抱きつぶされた。体格差というものを考えてほしい。体格差ってわかるかな、たいかくさ!
「いたっ、ちょ、苦、し……」
黙って、と彼の腕が締め付ける。
おおきな笑顔。おひさまの香り。
「……会いたかった」
頭に乗る彼の頬がやわらかい。硬い胸板。力強い腕。だいすきな匂い。だいすきな声。
だいすきなひと。
「──?!」
突然、身体が浮いた。腰を持たれて、ぐいと抱え上げられたのだ。おもわず首に抱きつく。
「昨日俺んこと見た?! 撮った?! どうだった?!」
「……かっこよかった」
「わはは、だろー?!」
少し距離をとって、蜜みたいな瞳が見上げてくる。綺麗な色。その瞼に唇を落とすと、これでもかとぎゅうと抱きしめられる。
「俺、バカだから難しいこと分かんねえけどさ、けど、名前ちゃんの隣りはあったけえの。名前ちゃんの寂しい部分埋めんのは、俺がいい」
(………っ)
「マジで好きなんだよ、名前」
世界の、音がする。
こんなに大きな声で、騒がしくて、なのにもう彼がいないと、──息衝くこの世界で、生きてはいけない。