はんぶんこした世界のなかで
*
「え?! 赤葦、お祭り行かねーの?!」
「行きますってば。でも別行動です」
「そんなの行かないのと同じじゃんかよ! なんで?! なんで!」
俺の返事を最後に、ぷつり、途切れた俺たちの会話。お互い身動きが取れなかったんだ。どうしたらいいのか分からなかった。踏み出すことができなかった。
それでも、そんな状況でも、動いてくれたのは彼女だった。
・もう少しであるお祭りの花火、……また、どんな色に見えるか話しましょうね?
管理人
・……あなたがそう言ってくれるのなら、喜んで。
匿名
たったこれだけの会話だった。
逢おうと言われたわけじゃない。特徴など何ひとつ知らない。俺はなにひとつ、リアルな彼女を知らない。
それでもきっと、俺たちは出逢える。
「なんでも、です。黙秘権行使します」
「もく? こーし……? ええいそんなの知らん! 赤葦は、俺と! 屋台食べまくるって毎年決まってんの!」
「はあ? 何言ってんですか、毎年って、去年しか一緒に行ってないでしょ」
「去年行ったらもう毎年なのとおんなじだろ!」
(……まったく)
毎度のことだが、今回はさすがに困り果てる。図らずとも助けを求めるような視線で、成り行きを見守っていた周囲を窺う。
面白がってないで、もう少し早く助けてもらえませんかね。
「まーまー、俺たちもいるじゃん?」
「木葉あ……」
「それにほら、明日は赤葦が死ぬまでスパイク練付き合ってくれるって言ってんだし?」
「うー」
完全に駄々っ子モードの木兎さん。を、宥めてくれている先輩達に、軽く会釈をして。俺はそそくさと部室を後にする。
ぱたり閉まったドアの向こう。
赤葦もあんな顔、することあんのなー!
なー、いやほんと、珍しいもん見たわ。
そんな声が上がっていたとは知る由もない。