03


「じゃあ紗良ちゃん、僕は先に戻るね」

「うん、ありがとう渚君」

学秀を待つ間、渚は紗良の話し相手になっていてくれた。
学秀の姿が見えると、渚は旧校舎の方へと帰っていった。

「待たせて悪かったね、紗良」

「ううん、大丈夫だよ。渚君も居てくれたし」

「そういえば今日は赤羽は居ないんだな。集会でも見当たらなかったが」

カルマは出席番号1番で目立つ赤髪をしているので、前から見ると居ないことは一目瞭然だった。

「カルマ君なら、お昼寝中だよ……」

紗良は苦笑いしてそう言った。

「まったく、あいつは……。けど、赤羽が居なくて良かったよ。せっかく紗良と久しぶりに話せる機会だからね」

カルマが居たら邪魔されていたに違いない、と学秀は思った。

校舎が離れてから、紗良と学秀が会うことはほとんど無かった。
E組は理由なく本校舎に入れないことや、学秀が生徒会の仕事で忙しいこともあり、前のように放課後に学秀と一緒に勉強をすることもなくなっていた。

「ところで、紗良。もうすぐ中間テストだけど、勉強の方はどうだ?」

「なんとか、頑張ってるよ」

「良かったらまた一緒に勉強しようか。分からないところがあれば教えるよ」

「ほんとう? でも、本校舎入りにくくて……」

「休みの日に外で会えばいい。次の日曜、紗良の予定が空いてたらどうかな?」

「あ、うん! 大丈夫だよ。お願いします!」

笑顔でそう言う紗良に、学秀もふっと表情を緩める。

「意外と元気そうだね、紗良。E組はどうかと心配していたんだが」

「大丈夫だよ。E組には渚君もカルマ君もいるし……あ、それからね、カエデちゃんっていう新しい友だちができて……」

紗良は楽しそうにE組での出来事を話し始める。
そんな紗良を見て、学秀は少し複雑な気持ちになる。

学秀にとって紗良が幸せそうなのは嬉しいことだが、E組での学校生活が充実しているというのは問題だ。
E組はこの学校の落ちこぼれとして差別され、みじめになるような仕組みになっているはずである。
それなのに、集会でのE組の様子を思い返してみても、今年のE組はどこか明るい雰囲気だった。

学秀はふと、紗良が手に持っている生徒会だよりのプリントに目を向けた。

「そのプリントは……」

本来ならば、E組には配られるはずのなかったプリント。
紗良にだけは後でちゃんとプリントを渡そうと思っていた学秀だったが、何故かE組全員分のプリントが配られたのでその必要は無くなってしまった。
よく見ると、そのプリントは印刷ではなく手書きで文字が書かれていた。

「手書き……?」

学秀は訝しむようにプリントを眺める。

「あっ」

紗良はまずい、と思って慌ててプリントを隠そうとするも、手首を掴まれて阻止されてしまう。

「……どういうことだ、紗良」

完璧すぎる手書きコピーのプリント、そして焦った紗良の様子に、学秀は紗良が何かを隠している、そう確信した。

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