05


「紗良、着いたよ」

耳元でカルマの声が聞こえてきて、紗良は目を覚ました。

「ん……? カルマくん……?」

「おはよ」

「おはよう……?」

寝ぼけていた頭がだんだんとはっきりしてきて、紗良は今自分が修学旅行中だったことを思い出した。

新幹線で京都に到着した後、クラスの皆で少し観光をして、その後旅館まではバスを使って移動していた。
その途中に眠たくなって、気づいたらカルマの肩によりかかって眠ってしまっていたようだ。

「ごめん寝ちゃってた……!」

紗良は慌てて身体を起こす。

「いーよ。寝顔はバッチリ撮らせてもらったから」

「え」

カルマが笑顔を浮かべてスマホの画面を見せてきた。
そこにはすやすやと眠る紗良の姿が写っていた。

「わああ……!! け、消してっ……!!」

「消すわけないじゃーん」

紗良はカルマのスマホに手を伸ばすが、ひょいっと躱されてしまう。
どうにかしてカルマのスマホを奪おうと奮闘していると、中村から声をかけられた。

「ほらほら、お二人さん。いちゃついてないで早く降りるよー」

「い、いちゃついてないよ……!」

「あ、そうだ中村。今晩紗良の寝顔撮っといてよ」

「ラジャ!」

中村はそう返事をして敬礼するように手を頭の横にかざす。

「中村さんまで……!」

2人には敵わないと判断した紗良は仕方なく写真の事は諦め、バスを降車し宿泊先の旅館へと入っていった。
こんな感じであっという間に修学旅行の1日目は終了した。
今日は普段以上にカルマにからかわれたような気がしつつ、なんだかんだで楽しい1日目だったなと紗良は思った。

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