07


連れてこられたのは、街中から少し離れた廃屋だった。
建物の中は薄暗く、ガラス瓶や椅子などが床に散乱している。

「ここなら騒いでも誰も来ねえな。楽しもうぜ、台無しをよ」

そう言って高校生達は卑下た笑みを浮かべる。
紗良とカエデ、神崎の3人は両手をロープで後ろに縛られていて、ここから逃げ出せそうにない。

「俺らもよ、肩書とか死ね!って主義でさ。エリートぶってる奴らを台無しにしてよ、なんてーか自然体に戻してやる、みたいな? 俺らそういう遊び沢山してきたからよ」

「……さいってー」

ぼそりと呟いたカエデの言葉に、不良グループのリーダーと思われる男は怒りを露わにする。

「何エリート気取りで見下してんだ!!」

カエデは首を掴まれ体を持ち上げられ、足をばたつかせている。

「カエデちゃんっ……!」

苦しそうなカエデを見ていられず、紗良は思わず高校生に体当りをかました。

「あァ!?」

体当り自体はほとんど効いていないようだったが、怒りの矛先が紗良へと変わった。
男はカエデを乱暴に放り投げると、今度は紗良の肩を掴み無理やり床へと押し倒す。

「いたっ……! は、離して……!!」

「暴れんじゃねぇっ!」

男は紗良の上に跨ると、ポケットから小型ナイフを取り出した。

「……っ!!」

首元にナイフの刃を突きつけられた紗良は、恐怖で身を強張らせる。
怯える紗良を見て男はニヤリと笑うと、紗良の制服のネクタイに手をかけ、するりと抜き取った。

「今から俺ら10人ちょいを夜まで相手してもらう。こんな場所じゃ、叫んでも誰も来ねえぜ」

「や……めて……」

抵抗する術もなく、かすれた声でそう訴える事しか出来ない。
もうダメだ、と絶望を感じたその時――。
ギィ、と扉の開く音が室内に響き、何人かが建物に入ってくる足音が聞こえた。

「お、来た来た。うちの撮影スタッフがご到着……」

現れた人物を見て、男は言葉を途中でつまらせた。

「修学旅行のしおり1243ページ。班員が何者かに拉致られた時の対処法」

聞き慣れた声に紗良はハッとして扉の方を見ると、そこには気絶している高校生を掴んでいるカルマと、渚、杉野、奥田の姿があった。

「なっ……てめえら!」

「みんな……!!」

どうやら、殺せんせーの作った修学旅行のしおりに書かれていた拉致対策のお陰で、この場所に辿りつけたようだ。

「……で、どーすんの? お兄さん達」

カルマは掴んでいた高校生を放り投げると、一歩前に歩み出た。

「これだけの事してくれたんだ。あんたらの修学旅行はこの後全部……入院だよ」

いつものように飄々とした口調だが、その目と声には怒りが滲み出ていた。

「……フン、チューボーがイキがんな」

その時、扉の向こうから、新たに足音が聞こえてきた。

「呼んどいたツレ共だ。お前らみたいな良い子ちゃんはな、見たこともない不良共だ」

しかし現れたのは、黒子の格好をした殺せんせーと、手入れをされ気絶している高校生だった。
全員頭を丸坊主にされ、眼鏡までかけさせられている。

「ふりょっ……不良……え!?」

「不良などいませんねぇ。……さて私の生徒達よ、彼等を手入れしてあげましょう。修学旅行の基礎知識を体に教えてあげるのです」

その場にいた残りの不良達は、修学旅行のしおりという名の鈍器で殴られ、次々に倒されていった。
紗良はその場に座り込んだまま、呆然とその様子を眺めていた。

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