09


旅館に戻り、食事とお風呂を終えた後、大部屋で皆で今日の出来事を話していた。

「そういえば4班、高校生に拉致されたんだって?」

「そうそう! 大変だったんだよー。ね、紗良ちゃん」

「うん。一時はどうなることかと思ったよ……」

小さくため息をつきながらそう言うと、片岡や矢田達から「大丈夫だった?」と心配そうな視線を送られ、紗良は笑顔を返す。

「大丈夫だよ。カルマ君達がすぐ助けに来てくれたから」

紗良がそう言うと、中村が「へぇー」と言いながら意味ありげな視線を向けてきた。

「カルマ、相当心配してたんじゃない? 紗良の事」

「心配は、してくれてたみたいだけど……」

カルマが助けに来てくれた時、力強く抱きしめられたことを思い出し、紗良の顔が赤くなる。

「おやおや、顔赤いよ? なんかあった?」

中村はニヤニヤとしながら肘で紗良をつんつんとつつく。

「な、何もないよ……!」

「ほんとにぃ〜?」

「ほんとだって!」

「ふーん。ま、いいけどさ……」

中村はそう言うと、腕を組み、少し真剣な様子で紗良の方を見る。

「あのさ、紗良は実際どうなの? カルマの事」

「どう、って……?」

中村の問いかけの意図が分からず、紗良は首を傾げた。
するとそこへ、倉橋がずいっと身を乗り出して来た。

「紗良ちゃんは、カルマ君と付き合ってるの〜?」

ふわふわとした口調で直球な質問をされ、紗良は慌てて否定した。

「えっ!? つ、付き合ってないよ……!!」

「そうなの? すごく仲いいからもしかしてと思ったんだけど……」

「私も、怪しいと思ってたんだけどなー」

口々にそう言われ、クラスメイトからそんな風に見られてたことに驚く。

「カルマ君とは、友達だよ……?」

紗良の答えに対して周りの皆は「えー」と不満そうな様子を浮かべる。

「紗良はさ、カルマに対して好きとかそういうの、全くないの?」

「す、好きは好きだけど、それは……」

「友達として、だけ?」

「……」

正直、今までそういう事を考えたことがなかったので、こんな風に改めて聞かれると、戸惑ってしまう。

「そう、だと思う……」

「なになに、歯切れ悪いねぇ〜。ほんとは好きなんじゃないの〜?」

そう言いながらまた肘でつんつんとつついてくる。

「や、やめてってば中村さん……!」

「そういえばカルマ、紗良の家によく行ってるんでしょ?」

「う、うん……」

「えっ! 家に呼ぶほどの仲なの!?」

「家で何してるの?」

興味津々といった風な眼差を皆から向けられ、紗良はたじろぐ。

「え、えっと……。私がご飯作って、一緒に食べたり、テレビ見てだらだらしたり……?」

紗良がそう答えると、夫婦じゃん! と突っ込まれた。

「もう付き合っちゃいなよー」

「えぇっ!?」

「2人、タイプは違うけどお似合いだと思うなー」

「ち、ちょっと、みんな……!」

どう対応して良いか分からずあたふたする紗良をよそに、大部屋ではしばらく紗良とカルマの話で盛り上がっていた。

「わ、私、喉乾いたから飲み物買ってくる……!」

紗良は適当に言い訳をつけて、大部屋から脱出することにした。

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