11
気持ちが落ち着くまで、紗良は1人で休憩スペースのイスに腰掛けていた。
(まだ、ドキドキしてる……。気持ちが決まったら聞かせてって言われたけど、どうしよう……)
火照った顔の熱を冷ますために買った冷たいジュースを一口飲む。
(やっぱり、すごく甘い……)
自販機にレモン煮オレが売っていたので買ってみたが、予想通りとても甘かった。でも嫌いな甘さではない。
いちご煮オレとはまた少し違った味で、甘酸っぱい後味が口の中に残った。
「紗良ちゃん」
ふいに頭上から声がかかって顔を上げると、そこには渚の姿があった。
「渚君……?」
「えっと、隣座ってもいいかな?」
紗良が頷くと、渚は紗良の隣に腰を下ろした。
「渚君、どうしてここに……?」
紗良が少し不思議そうに渚を見つめる。
渚は小さく微笑むと、こう言った。
「……カルマ君から、聞いたよ」
何をとは言わなかったが、おそらく先ほどの告白の事だろう。
「それで、紗良ちゃんまだここにいるんじゃないかなって思って、気になって来てみたんだ」
どうやら渚は紗良の事を心配して様子を見に来てくれたらしい。
「もし1人で居たいとかなら、僕は戻るけど……」
「ううん、ありがとう来てくれて。……少し話を聞いてもらってもいいかな?」
「うん。もちろん」
気心の知れた幼馴染である渚とこうやって話をしているだけで、少し気持ちが落ち着くのを感じる。
「……私ね、カルマ君にどう思ってるのかって聞かれて、うまく答えられなくて……。考えれば考える程好きってどういうことなのか分からなくなって行っちゃって……。私、どうすればいいんだろう……」
「紗良ちゃん……」
小さくため息をつく紗良に、渚は優しく「大丈夫だよ」と声を掛ける。
「別に無理に今すぐ答えを見つけようとしなくても良いんじゃないかな。カルマ君も、すぐに返事がほしいって言ってたわけじゃないんだよね?」
「……うん。今は気持ちを知っておいてくれればそれで良いって……」
「そっか。じゃあ焦って考える必要ないと思うよ。紗良ちゃんのペースで、ゆっくり自分の気持ちを見つけていけばいいんじゃないかな」
「そう、かな……」
「うん。少し話が変わるんだけど……僕ね、修学旅行で思ったんだ。まだまだみんなの知らない一面がたくさんあるんだなって。紗良ちゃんも、そう思わない?」
確かにそうだなと思って紗良は頷く。
「このクラス、まだ始まったばかりだし、これから一緒に過ごす内に、もっと色々知っていけると思うんだ。皆のことも、もちろん、カルマ君のことも」
「……!」
「だから、答えを出すのはそれからでも遅くないんじゃないかな」
紗良がカルマと知り合ったのは去年の春で、まだ1年ほどしか経っていない。
その1年間でだいぶ仲良くなったとはいえ、カルマについてまだ知らないこともたくさんあるのも事実だ。
同じクラスになるのも今年が初めてだし、このE組の中で過ごす日々を通して、カルマのことをもっと知っていきたい。そして、カルマともっと仲良くなりたい。紗良はそう思った。
そうすれば、おのずと好きという気持ちの答えが見つかる気がした。
「ありがとう、渚君。私、これからゆっくり自分の気持ちを見つけていくことにするね」
渚と話すことで、もやもやしてた気持ちがすっきりしたような気がした。
修学旅行も残す所あと1日。
今は、カルマや皆と過ごす日々を目いっぱい楽しもう。そう思った。
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