08
「そーいや寺坂君、さっき私のことさんざん言ってたよね。へヴィとかふとましいとか」
シロとイトナが去って行ったあと、寺坂は原に責められていた。
「い、いやあれは状況を客観的に分析してだな」
「言い訳無用!! 動けるデブの恐ろしさ見せてあげるわ!」
そんな寺坂を、カルマは岩場の上にしゃがみ込んで笑いながら見下ろす。
「あーあ、ほんと無神経だよなー寺坂は。そんなんだから人の手の平で転がされんだよ」
「うるせーカルマ!! テメーも高いところから見てんじゃねー!!」
寺坂はカルマの襟元を掴むと川に引きずり落とした。
大きな水しぶきが上がる。
「はぁあ!? 何すんだよ上司に向かって!!」
「誰が上司だ!! 触手を生身で受けさせるイカレた上司がどこにいる!! 大体テメーはサボり摩のくせに美味しい場面は持っていきやがって!」
寺坂の言葉に、近くに居た片岡と中村がうんうんと頷く。
「あーそれ私も思ってた」
「この機会に泥水もたっぷり飲ませようか」
そこに前原も加わって、カルマは再び川の中に沈められる。
そんな様子を少し離れたところから見守っていた紗良だったが、ふいに前原に名前を呼ばれた。
「おーい、一瀬!」
「お前ら、放せって……!」
カルマは前原と中村に腕を捉まれ身動きが取れない状態になっていた。
「ほら、やっちゃいな! 紗良!」
中村が紗良をそそのかす。
「え?」
「いつもやられてんでしょ! ほら!」
紗良は一瞬戸惑ったが、いつもからかわれてばかりなのでたまにはやり返すのも悪くないかと思い、カルマの正面から両手で水をすくってバシャッと思い切りかけてやった。
「……っ!!」
俯いたカルマの髪からぽたぽたと水が流れ落ちる。
「……えへへ、いつもの仕返し」
はにかむように笑う紗良とは対照的に、カルマは黒い笑みを浮かべる。
「へぇー、俺に水掛けるなんてイイ度胸じゃん、紗良」
「ひっ!?」
何かやり返されるのではないかと紗良は一瞬怯んだが、カルマは寺坂達に再び水の中に沈められて、紗良に構う余裕はないようだった。
紗良はホッと胸をなでおろす。
ギャーギャーと騒いでいる様子を見て、紗良は思わず笑みを漏らす。
(……なんだか、すごく楽しそう)
こんな風にクラスメイトと楽しそうに騒いでいるカルマを見るのは初めてで、カルマの新たな一面を見れた事が嬉しくて、紗良はじんわりと心が温かくなるのを感じていた。
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