09
「カルマ君、制服びしょ濡れになっちゃったね……」
「ほんとだよ。どーすんのこれ……」
川辺でカルマはため息を吐きながら、濡れたシャツとカーディガンを絞っていた。
「俺制服着てんのにあいつら容赦ないしさー。今日はジャージで帰るしかないかな。あーあ、サイアク」
文句を言いつつも、カルマの表情はどこか穏やかで、きっと本当は楽しかったんだろうなと思って紗良は笑みをこぼす。
「なーに笑ってんの」
「あんな風にはしゃいでるカルマ君、初めて見たなと思って」
「別に、はしゃいでないから」
不服そうな表情を浮かべるカルマを見て、紗良は再びくすりと笑う。
「でも私、ああいうカルマ君も好きだな」
「は……?」
カルマは虚を突かれたように目を丸くして紗良を見る。
そんなカルマの様子を見て、紗良はようやく自分の言った言葉を理解して、顔を赤くして慌てだした。
「あ、ち、違うの!! 今のは、そういう意味じゃなくて……!」
「えー違うの?」
カルマはわざとらしくがっかりしたような素振りを見せる。
「え、えっと、その……」
「じゃあ紗良は、俺の事キライ?」
「き、嫌いじゃないよ!!」
「じゃあ、好き?」
「……っ!」
紗良があたふたとしていると、カルマは少し困ったように笑って、紗良の頭をぽんぽんと撫でた。
「ごめんごめん、ちょっとからかっただけ。……返事は、待つって言ったもんね」
修学旅行の時に、言われた言葉。
『紗良の気持ちが決まったら、また聞かせてよ。それまで待ってるからさ』
その言葉通り、カルマは紗良の返事を待ってくれている。
その優しさに甘えて、ずっと返事を保留にしているけど……。
「じゃあ、教室戻ろっか」
「あ、うん……」
さっきの『好き』は無意識で、言った言葉だった。
けれど、それは偽りのない気持ちであることも確かだった。
(私は……。私の、気持ちは……)
答えはもう、とっくに出ていたのかもしれない。
――私はカルマ君の事が、好きなんだ。
ようやく自覚した恋心に、胸の奥がじんわりと熱くなった。
プールの時間 end
2017.2.24
←prev next→
目次に戻る
ALICE+