02


空港のロビーでは、搭乗手続きの最終案内のアナウンスが流れていた。
いよいよ学秀との別れの時間になり、紗良は目を涙で潤ませる。

「学秀君、元気でね……。アメリカに行っても、私のこと忘れないでね……ぐすっ」

ついにポロポロと涙を流し始めた紗良に、学秀は困ったように眉を下げると、紗良の両肩にポンと手を置き、少し屈んで目線を合わせた。

「紗良、泣かないでくれ。僕が紗良の事を忘れる訳ないだろう? 紗良は僕にとってかけがえのない大切な存在なんだから」

「学秀君……」

「紗良……」

学秀は泣いている紗良の体を両手でぎゅっと抱きしめる。
そこへすかさずカルマが割って入った。

「はい、ストーップ。浅野クン、何しれっと紗良のこと抱きしめてんの?」

カルマは学秀から紗良を引き剥がすと、軽く学秀を睨みつけた。

「ハグは欧米では挨拶なようなものだぞ」

「ここ日本だし、俺が許可しないから」

あーだこーだ言い合う2人を見て、泣いていた紗良も思わず笑みをこぼす。
高校時代、毎日のように見ていたこんなやり取りも、もう見られなくなってしまうかと思うと寂しい。

「……紗良。離れてしまうけれど、何かあれば直ぐに僕に連絡してくるんだよ。飛んで帰ってくるから」

「ありがとう、学秀君。でも心配しなくて大丈夫だよ。カルマ君もいてくれるし……ね?」

紗良が隣に立つカルマを見上げると、カルマは笑みを返した。

「そうそう。紗良のことは俺に任せてさ、浅野クンは自分の心配したら? MITって世界中からすごい奴らが集まってくる訳だし、今までのようにはいかないと思うよ?」

「ふん、大学でも僕が支配してみせるさ。いずれは世界の全てを支配するのが僕だからね」

そう言って学秀は不適な笑みを浮かべる。

「言うねぇ」

「ふふ、さすが学秀君だね」

学秀の顔は自信に満ちていて、彼なら本当にいつか世界中を支配してしまいそうだと紗良は思った。

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