05


5階の展望回廊に進むと、ガラスの窓に背を預けて立っている人物がいた。
明らかに敵だ。
こっそり様子を伺っていたが気づかれたようで、相手はガラスを手でつかみヒビを入れた。

「つまらぬ。足音を聞く限り…手強いと思えるものが一人も居らぬ。精鋭部隊出身の引率の教師もいるはずなのぬ……だ。どうやらスモッグのガスにやられたようだぬ。半ば相討ちといったところかぬ。出てこいぬ」

皆はそろそろと前に出る。
そして、怖くて誰も言えなかったことをカルマが言った。

「"ぬ"、多くね?おじさん」

「"ぬ"をつけるとサムライっぽい口調になると小耳に挟んだぬ。カッコ良さそうだから試してみたぬ」

どうやら外国の人らしい。ぬを付けていたのは意外と可愛い理由だった。

「間違ってるならそれでも良いぬ。この場の全員殺してから"ぬ"を取れば恥にもならぬ」

相手は指をゴキゴキと鳴らす。

「素手……それがあなたの暗殺道具ですか」

「こう見えて需要があるぬ。身体検査に引っかからぬ利点は大きいぬ。近づきさま頚椎をひとひねりぬ。その気になれば頭蓋骨も握りつぶせるぬ」

それを聞いて紗良はビクリと肩を震わせる。

「だが面白いものでぬ。人殺しのための力を鍛えれば鍛えるほど……暗殺以外にも試してみたくなる。すなわち強い敵との殺し合いだぬ」

そう言って烏間の方を見る。

「だががっかりぬ。お目当てがこのザマでは試す気も失せたぬ。雑魚ばかり一人でやるもの面倒だ。ボスと仲間呼んで皆殺しぬ」

そのとき、カルマが近くの観葉植物の幹を持って、連絡をとろうとしていた相手の携帯を叩き壊した。

「ねぇ、おじさんぬ。意外とプロってフツーなんだね。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ。ていうか、速攻仲間呼んじゃうあたり、中坊とタイマン張るのも怖いひと?」

カルマはタイマンを張るつもりのようだ。
しかし相手は殺し屋。下手したら殺されてしまうかもしれない。
紗良はカルマを止めようと、焦ったように名前を呼んだ。

「カルマ君……っ!」

「よせ、無謀だ!」

烏間もカルマを止めようしたが、それを殺せんせーが制した。

「ストップです烏間先生。アゴが引けている。今までの彼なら余裕をひけらかしてアゴを突き出し、相手を見下す構えをしていた。でも今は違う」

今のカルマは、目はまっすぐ油断なく、正面から相手の姿を観察している。

「……いいだろう。試してやるぬ」

「じゃあ遠慮なく」

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