07


次の階は、6Fのテラスラウンジだ。
E組の女子達+女装した渚というメンバーで潜入することになった。

「どうして僕がこんな格好……」

「男手も欲しいけど、こういうとこは男にはチェック厳しいの」

「だからって……」

「作戦なんだから!」

「ほんとに……?」

恥ずかしそうに俯きながら女子達の後をついていく渚に、紗良は明るく声をかける。

「大丈夫だよ渚君。すごく似合ってるよ!」

「紗良ちゃん、それフォローになってないからね……」

テラスラウンジ内を歩き始めてしばらくすると、誰かが後ろから紗良の肩をポンと叩いた。

振り返ると、キャップを被った同い年ぐらいの男子がいた。お酒を飲んでいるのか、顔が少し赤い。

「ね、どっから来たの君ら? そっちで俺と飲まねー? 金あるから何でも奢ってやんよ」

「え、えっと……。お酒はちょっと……」

「いいじゃんか! 甘いお酒もあるしさ!」

女子たちが冷めた視線を送っているのも気に留めずに、その男子はぐいぐいと誘ってくる。

仕方がないので、紗良と渚で少しの間相手をして、その間に他のメンバーで下見を行うことになった。






***






「そっか〜紗良ちゃんと渚ちゃんっていうのか〜。俺、ユウジな」

ユウジに連れられて、紗良と渚はテーブル席についた。
お酒は丁重にお断りして、代わりにジュースを頂いた。

「ユウジ君……はさ、親と来てるの?」

「親ァ?バカ言え。うちの親にそんなヒマあるわけねえ。ここだけの話なーー」

ユウジは饒舌に親自慢をし始めた。親はテレビで有名な大物司会者らしい。

一通り話し終えた後、ユウジはポケットから何かを取り出した。

「それ……タバコじゃないよね?」

「あぁ。ま、法律じゃダメなやつだ」

渚の質問に、ユウジは得意げにそう答えた。

「ほ、法律でダメなやつはダメなんじゃ……?」

「何言ってんだよ。俺らの歳でこういうの知ってるやつがカッコいいんだぜ」

火をつけようとしたところで、ユウジが咥えていたドラッグを渚がひょいっと取り上げた

「学校の先生が言ってたよ。『吸ってカッコよくなるかどうかは知らないが、確実に生きづらくなるだろう』って」

渚の言葉にユウジは顔をしかめ、チッと舌打ちを返した。

「生きづれーんだよ男はもともと!」

そう言いながらテーブルをドン!と拳で叩きつけて、紗良と渚はびくりと肩を揺らす。

「男はよ。無理にでもカッコつけなきゃいけねーんだよ。俺みたくいつも親と比較されてりゃ尚更な。おまえら女はいいよな。最終的にはカッコイイ男選ぶだけでいいんだからよ」

イライラした様子でそう語るユウジを紗良はしばらく見つめた後、ぽつりと呟いた。

「……男の子の大変さは私には分からないかもしれないけど、」

紗良は視線を少し下に落として話を続ける。

「すごい人が身近にいて、比較される気持ちは少し分かる、かも」

そう言いながら、紗良は少し困ったように笑みを浮かべた。
昔の自分は、いとこである学秀と自分を比較して、なかなか自分に自信を持つことができなかった。
有名人の親がいるのとはまた違うかもしれないけれど、自信がないからこそお酒やドラッグでカッコつけようとしてしまうのだろうと思う。

「だけど最近はね、周りのみんなのお陰で……少しずつ今の自分に自信を持てるようになったんだ」

紗良は俯いていた顔を上げ、柔らかく微笑んだ。

「……」

その時、少し離れたところからカエデが紗良を渚の名前を呼ぶ声が聞こえた。下見はもう終わったようだ。

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