03
二学期の始業式。
体育館の壇上で、五英傑の1人である荒木が話を始めた。
「今日から3年A組にひとり仲間が加わります。昨日まで彼はE組にいました」
「!!」
「では彼に喜びの言葉を聞いてみましょう! 竹林孝太郎くんです!!」
竹林がA組に移ることをたった今知ったE組の皆は、驚きを隠せなかった。
竹林は壇上に上がりスピーチを始めた。
「僕は4ヶ月余りをE組で過ごしました。その環境を一言で言うなら、地獄でした。やる気のないクラスメイト達。先生方にもサジを投げられ、怠けた自分の代償を思い知りました」
竹林がA組に行ってしまった事はもちろんショックだったが、それ以上に竹林がE組の事を悪く言うようなスピーチを全校生徒の前でした事が何よりショックだった。
「こうして本校舎に戻ってこられた事を心底嬉しく思うとともに、二度とE組に落ちることのないよう頑張ります」
パチパチパチ、と拍手が沸き起こる。
「おかえり、竹林くん」
「偉いぞ竹林!!」
体育会内が本校舎の生徒達の拍手と歓声に包まれた。
E組は、その様子をただ唖然と見つめていた。
***
放課後、E組の皆は竹林から話を聞くために、本校舎前で待ち伏せることにした。
「おい竹林!」
「説明してもらおうか、何で一言の相談もないんだ竹林?」
「何か事情があるんですよね? 夏休みの旅行でも竹林くんがいてくれてすごく助かったし!! 普段も一緒に楽しく過ごしていたじゃないですか!!」
「賞金100億。殺りようによってはもっと上乗せされるらしいよ。分け前いらないんだ竹林。無欲だね〜」
皆が竹林に声をかけるが、彼には響いていないようだった。
「……せいぜい10億円。 上手いこと集団で殺す手伝いが出来たとして、僕の分け前は10億がいいところだね」
竹林は淡々と答える。
「僕の家は代々病院を経営してる。10億って金はうちの家族には働いて稼げる額なんだ。出来て当たり前の家。 出来てない僕は家族として扱ってもらえない」
仮に10億手にしても、家族からは認めてもらえないと竹林は言う。
トップクラスの成績を取りE組から抜けれることで、初めて親に成績の報告ができた、と。
「僕にとっては、地球の終わりより100億よりも、家族に認められる方が大事なんだ。裏切りも恩知らずも分かってる。君たちの暗殺が上手くいくことを祈ってるよ」
そう言って竹林は背を向けて去っていった。
今まで一緒に頑張ってきたクラスメイトが離れていくのは辛かったが、それが本人の望みであれば止めることは誰にもできない。
「……竹林くんにとっては、E組よりA組のほうが、幸せなのかな」
紗良は俯いて、そう呟いた。
「さぁね。少なくとも俺には全然幸せそうに見えなかったけど」
去っていく竹林の後ろ姿は、どこか寂しげに見えた。
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