02
「やめて、騎士カルマ! もう誰も傷つけないで!!」
茅野が姫役、カルマが騎士役、寺坂が魔物役として、子供達の前で劇を披露していた。
紗良は子供達と一緒に劇を観ていた。
「いやいや姫、この魔物を退治しないと王国の平和は戻りませんって」
カルマは寺坂を取り押さえてグーで殴っている。
(カルマ君……演技じゃなくて普通に寺坂くんのこと殴ってるよね……)
紗良は苦笑いを浮かべた。
「てめえカルマ、当てるのなしって台本……最初から殴るのが目的か!!」
怒った寺坂がカルマに反撃を始め、2人の戦いに園児たちは大盛りあがりだ。
「すげぇ……本格的アクションだ!!」
「あぁ……ディズニー一人勝ちのハリウッドよりよっぽど刺激的だ」
しばらくして奥田がクロロホルムを染み込ませた布で寺坂の口を塞いだ。
「ね、眠れ魔物よ〜!」
クロロホルムを吸い込んだ寺坂は白目を向いて仰向けに倒れた。
「魔法使いのクロロホルムで、魔物は無傷で眠ったのでした〜! 科学の力でめでたしめでたし!」
「わ〜っ!」
「はいみなさん、面白かったらはくしゅー!」
茅野の掛け声て、拍手が巻き起こる。劇は大盛況に終わった。
***
外では、古くなった建物を修繕するため、力仕事班の男子達が木材を集めたり設計図面を書いたりしていた。
また、小学校不登校の子供達には渚達がマンツーマンで勉強を教えていた。
紗良はというと、まだ勉強の必要のない小さい子供達の遊び相手をしていた。
「ねぇねぇ、わたしが描いた絵みて!」
「うん、どんな絵を描いたの?」
紗良が聞くと、小さな女の子が嬉しそうに絵を見せてくれた。
「みて、これが私のおうちで、こっちが私のおかあさんとおとうさん!」
女の子は指をさして説明する。
「すごいね、とっても上手だよ!」
紗良が褒めると、女の子は嬉しそうに笑った。
「紗良おねえちゃんー! いっしょにおままごとしようよー!」
「いいね、おままごとしよう!」
その時、教室の隅の方で1人で座っている男の子を見つけた。
紗良その子ども元へ向かい、しゃがんで目線を合わせる。
「こんにちは」
「……」
人見知りなのか、男の子は黙ったまま何も答えない。
「私は紗良っていうの。君の名前は?」
「……かける」
「かけるくんって言うんだね。カッコいい名前だね」
男の子は少し照れたように小さく頷いた。
「かけるくんは、何歳?」
「えっと、4歳」
最初は少し警戒していた様子だったが、紗良の柔らかい声に安心したのか、少しずつ笑顔を見せ始めた。
「ねぇ、かけるくんも一緒におままごとで遊ぼうよ」
「……うん!」
紗良が手を差し伸べると、男の子は嬉しそうにその手を取った。
紗良は男の子を他の子供たちのところへ連れて行き、「みんな、かけるくんも一緒に遊びたいって。おままごとに混ぜてあげてね」と言った。
子供たちはすぐにかけるを歓迎し、みんなで楽しそうに遊び始めた。
子供たちの無邪気な笑顔に触れながら、紗良は心が温かくなるのを感じた。
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