03


カルマと渚がそんなやり取りをしていることなどつゆ知らず、紗良は学秀に勉強を教わっていた。

「ねぇ、学秀君。この英文の訳し方ってこんな感じで良いのかな……?」

「惜しいね。この場合この単語の意味はこれじゃなくて……」

学秀は全教科パーフェクトなため、質問すれば何でもすぐ答えてくれる。おまけに丁寧な解説までついてくる。

「なるほど〜。ありがとう!」

「どういたしまして。そういえば、今日は数学の勉強はしなくても良いのかい?」

紗良は数学が苦手なのでいつも真っ先に取り掛かるのだが、今日は手をつけようとしない。

「うん、大丈夫だよ。数学が得意な友達ができて、教えてもらってるんだ」

そう言って紗良はニコッと笑った。

「そう、それは良かったね。でも少し寂しいな。紗良に頼ってもらえることが減るのは」

「学秀君のことはすごく頼りにしてるよ? 小さい頃からすごくお世話になってて、感謝してもしきれないぐらいだよ」

学秀と紗良はいとこ同士だ。
紗良は幼くして父親を亡くし、母は仕事に出ていたため、小さい頃は学秀の家に預けられることも多かった。
学秀は昔から勉強も運動もでき、紗良が知らないことを何でも知っていて、困ったときはいつでも助けてくれた。
そんな学秀を紗良はとても頼りにしていたし、学秀も紗良の世話をよく焼いていた。

そんな関係がずっと続いていたが、中学に入り、学秀の他生徒からの人気が高まるにつれ、紗良だけ特別扱いしていることに反感を持つものも現れた。
前に一度嫉妬した女子から紗良が呼び出され脅しをかけられたことがあり、それ以来いとこであるという事は隠し、なるべく人目を避けて会うようにしていた。
常に成績トップの学秀のいとこだと名乗ることは紗良にとっても少しプレッシャーだったので、その方が気が楽でもあった。

「期末試験も近いし、よかったら明日も一緒に勉強しようか」

「いいの? 私は有難いけど……。教えてもらうばっかりで、学秀君には申し訳ないような……」

「問題ないよ。人に教えるのもいい勉強になるしね。それに、紗良と2人で勉強できる時間は僕にとっても楽しみなんだ」

なんて、さわやかな笑顔で学秀はそう言った。こういう事をサラッと言えるからこそ皆から人気なんだろう。

「それなら、嬉しいな。じゃあ明日もよろしくお願いします!」

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