05


「……は? いとこ?」

カルマは紗良の返答を聞くと、少し拍子抜けしたように目を丸くする。

「うん、いとこ」

「それだけ?」

「いとこ兼、友達、みたいな……?」

カルマはまだいまいち納得していないような顔をしている。

「あ、あの……赤羽君、とりあえずちょっと離れてもらっても良いかな……?」

紗良がそう言うと、ようやくカルマは扉についていた肘を離して紗良と距離をとった。

カルマと背後の扉との板挟み状態からやっと開放され、紗良はホッと息をつく。

「えっとね……学秀君には小さい頃からお世話になってるの。お母さんが仕事で忙しい時はよく学秀君の家に預けられてて、一緒に遊んだり、いつも面倒見てくれてたんだ」

「ふーん……」

「今でも勉強教えてくれるし、色々と助けてくれて、すごく頼りになるお友達なの」

「仲良いんだね」

とカルマは半ば投げやりな調子でそう言った。それに対して紗良は

「うん!」

と嬉しそうに答える。

カルマは思わず紗良の頬を軽くつねった。

「な、何するの!?」

「いやなんとなく……」

「そ、そんな」

「でもなんで、いとこって事隠してんの?」

紗良はつねられた頬をさすりながら答える。

「それは……ほら、学秀君って人気者だから、いとこだからって私が親しくしてるとその事をよく思わない人たちもいて……」

それだけ言うとカルマは理解したようで「あ〜」と相槌をうった。

「私成績そんなに良いほうじゃないし、本来なら学秀君と仲良くできる立場じゃないから仕方ないんだけどね」

そう言って紗良は苦笑いする。

「学秀君の立場もあるし、学秀君と理事長の親族だなんて名乗るのは私も恐れ多いし、隠しておいたほうがお互いのためかなって……」

「そっか、理事長とも親戚ってことになるんだね」

「うん。私のお母さんの兄にあたるのが理事長先生だよ」

「へぇ。でも紗良ちゃん、あの二人と親戚って感じしないね。全然似てないし」

「……そう、だね。私も学秀君みたいに、勉強も運動も、なんでも出来たら良いのになって、思う……」

そう言うと、紗良は少しだけ悲しげな笑みを浮かべた。
性格面で似てないという事をカルマは言ったつもりだったのだが、紗良は違うことを気にしていたようだった。

紗良は学秀と自分を比較して、自分の実力のなさに落ち込んでしまうこともあった。
全てが完璧な学秀のことを紗良は尊敬していたが、一方で実力のない自分にコンプレックスも持っていた。

「……俺はそのままで良いと思うけど?」

「え?」

「浅野クンみたく勉強も運動も出来なくたって、紗良ちゃんには紗良ちゃんの良いところがあるんだから、気にすることないって」

「……!」

カルマにそう言ってもらえて、紗良は素直に嬉しかった。

「赤羽君、ありがとう……!」

紗良はふわりと微笑むとカルマにお礼を言った。

そんな紗良を見て、カルマは紗良の頭に手をおきポンポンと撫でた。

「じゃー飯くおっか。持ってきてんでしょ?」

そう言ってカルマは紗良が手に持つお弁当を目で指し示した。

「うん、食べよう」

紗良は笑顔で答えた。

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