02


D組の教室の手前で、紗良は思わず足を止めた。
目に入った教室内の光景に息を呑む。

渚は暗い表情で俯いて自分の席に座っており、他のクラスメイト達は渚を避けるよようにして距離を取り、蔑むような視線を向けている。

「E組行きとか終わったな、アイツ」
「俺、あいつのアドレス消すわ」
「俺もー」

心ない言葉を次々と渚に浴びせかけるクラスメイト達。
そんな様子を目の当たりにして、紗良は渚がE組行きになったというのが真実なんだと思い知った。
渚は何も言わず、ただ黙って膝の上で拳をギュッと握りしめている。

今すぐ駆け寄って声をかけたいのに、教室の前から足が竦んで動かない。
渚をかばってあげるべきだと分かっているのに、教室に飛び込んでいくだけの勇気が足りない。

しばらくそのまま紗良が教室前で立ち尽くしていると、渚は荷物を持って席を立ち上がり、教室から出てきた。
渚は紗良に気づくと一瞬驚いたような表情を見せた。

「紗良ちゃん……」

「渚君……」

向かい合った二人に沈黙が流れる。やがて渚が口を開いた。

「……聞いた、よね? 僕、E組行きになっちゃった」

紗良は何と声をかければ良いか分からず、口ごもった。

渚は辛そうな表情で、声を絞り出すようにしてこう告げた。

「だからごめん、もう僕には関わらないで……」

「え……」

渚は紗良の横を通り過ぎ、そのままどこかへ去って行ってしまった。

紗良はその場から動けずに呆然と立ち尽くす。

"もう僕には関わらないで"

その言葉がズシリと紗良の胸にのしかかった。

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