03


「え……?」

思いがけない宣告に、紗良は目を丸くして驚いた。

「……ちょっと、待ってよ。俺はともかく、なんで紗良まで……」

「黙れ、お前らに口答えする権利はない! もう決まったことだ!」

「……っ!」

「そういえばお前ら、E組に行った潮田とも仲良いらしいじゃないか。良かったな。3人仲良くエンドのE組だ」

大野の言葉に、カルマはついに切れた。
室内にある机や椅子を思い切り蹴り飛ばす。
こんな風に怒りに任せて暴れるカルマを見るのは初めてだった。
紗良はその光景をただ呆然と眺めることしか出来なかった。

あっという間に部屋の中は無残な状態になった。
大野は腰を抜かし、怯えるような目でカルマを見ている。
カルマはそんな大野を一瞥した後、少し乱暴に紗良の手首を掴むと、足早に職員室を後にした。
紗良はカルマに引っ張られるような形で後に付いていく。
無言でスタスタと歩いて行くカルマに紗良は声を掛ける。

「あ、あの、カルマ君……」

紗良が名前を呼ぶと、ようやくカルマは歩みを止めた。
少し俯いて立ち止まっているカルマの背中を、紗良は見つめる。

「……ごめん、紗良。巻き込んだ」

「え……?」

「俺のせいで、紗良までE組に……」

「そんな……カルマ君は、悪くないよ」

「けど……」

「カルマ君は、虐められていたE組の人を助けてあげただけだもん。間違ってないよ! それなのに……」

紗良の目から涙が溢れる。頬を伝い、ぽたり、ぽたりと床へ落ちる。

「どうしてこんな事になっちゃうんだろう……」

「紗良……」

「ごめんね、E組に行くことが辛くて泣いてる訳じゃないの。ただ、正しいことをしたのに認めてもらえなかったのが悔しくて……」

「うん……。俺も、同じ気持ちだよ」

カルマは紗良の頭を優しく撫でてくれた。
だけどきっと、信頼していた先生に裏切られたカルマの方が辛いはずだと、紗良は思った。
それなのにカルマに慰めてもらっている自分が情けなくなってきた。

「いつまでも泣いてたって、仕方ないよね」

紗良は手の甲で涙を拭う。

「あのね、E組に行くことになっちゃったけど、カルマ君と渚君が一緒なら楽しみだなって思う気持ちもあるの」

紗良は少し微笑んでそう言った。
しかしカルマの表情は依然浮かないままだ。

「俺も、紗良と同じクラスになれるのは嬉しいけど……」

この学校のE組生徒への差別は酷い。
E組に落ちれば、あの生徒のように虐められたりすることもあるだろう。
カルマ自身は、やられたらやり返す自信もあったので何の問題もなかった。
しかし、紗良はどうだろうか。
素行不良の自分とは違って、今まで真面目に学校生活を送ってきた紗良をそんな目に遭わせたくなかった。

「……やっぱE組に行くのは、俺だけでいいよ」

カルマは小さくそう呟いた。

「え?」

「いや、なんでもない。悪いけど、用があるから俺行くね」

そう言ってカルマは紗良を残してその場を去って行った。

「カルマ君……」

紗良は去っていくカルマの後ろ姿をただじっと眺めていた。

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