06


「浅野君に一瀬さん。私に何の用だい?」

紗良と学秀は理事長室を訪れていた。

この椚ヶ丘中学校の理事長である浅野學峯は、息子である学秀に対しても特別扱いはせず、他の生徒と同じように扱う。
それは、學峯の姪にあたる紗良に対しても同じだった。

「単刀直入に言います。紗良のE組行きを取り消して下さい」

学秀はきっぱりとそう告げた。

「その話だろうと思っていたよ。しかし、一瀬さんは赤羽君と共にA組の生徒に暴力行為を行ったとの報告を受けているが?」

「それは間違いです、理事長。正確にはA組の生徒を殴ったのは赤羽一人で、紗良は何も手を出していません」

「それは本当かい?一瀬さん」

「は、はい……」

「なんなら、当事者である3年のA組とE組の生徒からの証言も得ています」

学秀が言うには、A組の生徒はE組の生徒をかばうような態度をとった紗良の事が気に入らなかったため、紗良からも暴力を受けたと嘘をついたらしい。

「……なるほど、それが事実だとすれば一瀬さんのE組行きは取り消そう」

学秀はほっと胸を撫で下ろす。
と同時に、あまりにもあっさりと學峯がE組行きの取り消しを認めたことに少し違和感を感じていた。
だったら最初からE組に落とさなければいい話だ。
紗良が暴力を振るうようなタイプでは無いことは、學峯だって知っているはずだった。

「あの、理事長先生……」

恐る恐る紗良が口を開いた。

「赤羽君のE組行きも、取り消してもらえませんか?」

それを聞いた学秀は眉間に皺を寄せた。
カルマのE組行きまで取り消してもらうように言うつもりはもともと無かったし、カルマからもそんな事は頼まれていない。
しかし紗良は、理事長に抗議をしに行くことを学秀に提案された時、カルマのE組行きも取り消してもらうように言おうと心に決めていた。

「確かに赤羽くんはA組の人に暴力をふるいました。だけどそれは、A組の人がE組の生徒を虐めていたからです。A組の人にだって非はあります。赤羽君だけ一方的に悪者にされるのは、おかしいです」

紗良の主張を聞いた學峯は、少し呆れたような視線を投げ、小さく息を吐いた。

「一瀬さん、君は何か勘違いをしているようだね」

「……え?」

「もちろん、虐めは良くない。けれどE組の生徒がそのような扱いを受けることは仕方のない事なんだよ。弱者は強者に逆らうことは出来ない。この学校は、そういう仕組みになっているんだ」

「じ、じゃあ、虐めを止めたカルマ君の方が間違ってたって言うんですかっ……?」

「赤羽君は結果的に、A組の生徒に大怪我を負わせた。E組の生徒を庇ってA組の生徒に怪我を負わせるなど絶対にあってはならない事だ。悪いのは赤羽君だよ」

「そんな……」

「それから、君のE組行きを取り消すには1つ条件がある」

「条件……?」

「A組の生徒への謝罪。これが条件だ」

「!!」

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