03
6時間目は小テストだ。
静かな教室内に、ブニョンブニョンと殺せんせーが壁に触手を押し付ける音が鳴り響く。
どうやら先ほどカルマにおちょくられた事にムカついて、壁パンをしているらしい。
「あーもう、ブニョンブニョンうるさいよ殺せんせー!! 小テスト中でしょ!!」
「にゅやっ!! こ、これは失礼!!」
岡野に注意された殺せんせーは壁パンをやめて大人しくなった。
これで静かにテストを受けることが出来る、紗良がそう思った矢先、今度は寺坂達がカルマを挑発するような声をかける。
「よぉカルマ。あのバケモン怒らせて、どうなっても知らねーぞ」
「またおうちにこもってた方が良いんじゃなーい」
カルマは特に怒った様子もなくさらりと言い返す。
「殺されかけたら怒るの当たり前じゃん寺坂。しくじってちびっちゃった誰かの時と違ってさ」
「なっ!! ちびってねーよ!!」
(うぅ、全然テストに集中出来ない……)
言い合うカルマと寺坂の間に挟まれている紗良は良い迷惑だ。
「紗良、大丈夫だった? 寺坂なんかの隣の席で」
カルマはわざとらしく心配するような声をかける。
「え、えっと……」
紗良がどう答えるべきか悩んでいると、寺坂がドン!と拳で机を叩く音が響いてきて紗良は肩をすくめた。
「テメェカルマ! さっきからケンカ売ってんのか!!」
今にも喧嘩が勃発しそうな雰囲気に、紗良はひやひやする。
「こらそこ! テスト中に大きな音を立てない!!」
殺せんせーに注意されたことによりその場は収まり、紗良はホッと胸を撫で下ろした。
「ごめんごめん、殺せんせー。俺もう終わったからさ、ジェラート食って静かにしてるわ」
そう言うとカルマはジェラートを取りだし食べ始めた。
「駄目ですよ、授業中にそんなもの……そ、それは!! 昨日先生がイタリア行って買ったやつ!!」
「あ、ごめーん。職員室で冷やしてあったからさー」
「ごめんじゃ済みません!! 溶けないように苦労して寒い成層圏を飛んできたのに……!」
「へー。で、どーすんの? 殴る?」
「殴りません! 残りを先生が舐めるだけです!!」
殺せんせーがカルマの方へとズンズンと歩いて行く。
その時、バチュッ!!という音がして殺せんせーの足がどろっと溶けた。
(えっ…!?)
紗良が驚いて殺せんせーの足元を見ると、床には対先生BB弾が散らばっていた。
どうやらカルマが仕掛けていたようだ。
「あっはー。まァーた引っかかった」
カルマは殺せんせーに向けて銃を発砲する。殺せんせーはそれを素早くかわした。
「何度でもこういう手使うよ。授業の邪魔とか関係ないし。それが嫌なら……俺でも俺の親でも殺せばいい」
カルマは殺せんせーにジェラートをベチャッと押し付けた。
「でもその瞬間からもう誰もあんたを先生とは見てくれない。ただの人殺しのモンスターさ。あんたという『先生』は、俺に殺されたことになる」
(カルマ君……)
なんだかいつもとは雰囲気の違うカルマの様子に、紗良は胸騒ぎを覚える。
「はい、テスト。多分全問正解。じゃね先生、明日も遊ぼうね!」
カルマは解き終わったテスト用紙を殺せんせーに渡すと、すたすたと教室を出て行ってしまった。
紗良はその後ろ姿を、不安げにじっと見つめていた。
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