第8話
「ナマエ! おはよう〜!」
エマが勢いよく部屋の中に入ってきた。
それに続いてノーマンとレイも入ってくる。
誰も部屋に入れないっていう約束だったのに、とレイに抗議の視線を送るも、バツが悪そうに目をそらされる。
よく見ると、部屋の外では他の子供たちがドアの隙間から中の様子を伺っている。
「朝食、持ってきたよ!」
「……ありがとう、そこに置いといて」
「朝食の後、みんなで鬼ごっこするんだけどナマエも一緒に、」
「ごめん、私は一緒に遊べない」
「どうして?」
「どうしても」
「わたしはどうしてもナマエと遊びたい!」
「……」
「ナマエは何の遊びが好き?」
「みんなで遊ぶのは、ちょっと……」
「じゃあじゃあ、チェスとかどう? 1対1ならいい?」
エマの勢いに押され、ナマエは困惑の表情を浮かべる。
レイはお手上げだとでも言うように肩をすくめた。
「今日が駄目なら、明日なら良い?」
ナマエは静かに首を横に振る。
「じゃあ明後日は?」
「……」
「どうしても、駄目?」
悲しそうな表情を浮かべるエマに、胸が痛む。
「せっかく家族になったのに、ナマエと一緒に居られないのは寂しいよ……」
「エマ……」
そんな顔をさせたい訳じゃない。
他の皆には、少しでも多く笑顔で居て欲しいと思っていた。
大切な人を失う思いを二度としたくないから、もう誰とも仲良くするつもりはなかった。
だけど、自分が傷つくのを避けるために誰かを悲しませてしまうのは、本意ではない。
どうしようか迷っていると、ノーマンが口を開いた。
「じゃあさ。一緒に遊ぶかどうかは置いといて、とりあえず食堂で一緒に朝食を食べるっていうのはどう?」
ノーマンの提案に、エマの顔がパッと明るくなる。
「そうしよう! 一緒に食べようよ、ナマエ」
「で、でも……」
「この辺りで妥協しといたほうが良いんじゃね?」
とレイが言う。
「エマはこうと決めたら面倒くさいぐらいしつこいからな」
「レイ〜! 誰が面倒くさいって?」
レイの言う通り、この辺りで折れたほうが良いのかもしれない。
ただ、朝食を食べる場所が変わるだけだ。必要以上に仲良くしないようにすればいい。
「……分かった。じゃあご飯は皆と一緒に食べる」
「!! やったぁ〜!! ノーマン! レイ! 聞いた? ナマエが一緒に食べてくれるって!」
「うん。良かったね、エマ」
エマは満面の笑みを浮かべてその場で飛び跳ねている。
そこまで喜んでくれるとは思わず、ナマエは目を瞬かせた。
「そんなに、嬉しいの?」
「嬉しいよ! 他のみんなもきっと喜ぶよ!」
扉の向こうからこっそり覗いていた子供たちも嬉しそうな表情を浮かべている。
なんだかむず痒い気持ちになり、戸惑いながらレイの方を見る。
「ま、良かったんじゃね?」
「レイも嬉しいってさ」
「は? おいノーマン、勝手なこと言うなよ」
「顔に書いてあるよ?」
「そんなわけ……」
「あはは! 行こう、ナマエ!」
ナマエはエマに手を引かれて、皆と一緒に朝食を食べるために食堂へと向かった。
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