第9話


食堂に行くと、みんながナマエの事を歓迎してくれた。
ずっと冷たい態度をとっていたのに、こんなに暖かく迎えてくれて、嬉しいような申し訳ないような複雑な気持ちになる。
朝食の準備を手伝っていると、後ろからイザベラに声をかけられた。


「あら、食堂で食べることにしたの?」

「う、うん。エマに誘われて……。良い、かな?」

「もちろんよ。私はあなたがみんなと仲良くしてくれたら嬉しいわ。ただ……」


イザベラはナマエの耳元に顔を近づけ、囁いた。


「"秘密"は、ちゃんと守ってね」


穏やかな口調でありながらも氷のような冷たさを感じ、ナマエはゾクリとした。


「……分かってる」


ナマエがそう返すと、イザベラは満足そうに笑みを浮かべ、離れていった。

ふぅ、と小さく息を吐く。
忠告されるまでもなく、ハウスの秘密を誰かに話すつもりはない。

しばらくして朝食の準備が完了し、皆が席に着き始める。
どこに座ろうかと視線を彷徨わせていると、レイと目があった。
レイが自分の隣の席をポンポンと叩くので、そこに座らせてもらうことにした。
このハウスではずっと一人で過ごしていて勝手が分からないことも多いので、レイが近くに居てくれると心強かった。


「こうして今日も39人の兄妹みんなで幸せに暮らせることに感謝して、いただきます」


食堂での食事は、とても賑やかだった。
こうやって、誰かと一緒に食事をするのはいつぶりだろうか。

あの日以来、食事の味が分からなくなっていたけれど、今日は少しだけ美味しく感じた。

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