第11話


ナマエは本を持ったままあっけにとられたようにその場に突っ立っていると、レイに「座れば?」と促された。
部屋に戻るなら今だ。レイはきっと無理に止めはしないだろう。だけど……。

ナマエはエマが貸してくれた本を、じっと見つめる。
エマやみんなの優しさを、無下にはしたくなかった。

ナマエはレイが座っている木陰近くに腰を下ろした。


「……もう引きこもりは卒業か?」


レイは少しからかうような口調でそう言った。


「……。レイが寂しくないように一緒に居てあげてるの」

「それはどーも」


レイは小さく笑うと、視線を本に戻した。
ナマエもエマが貸してくれた本を開いて読み始める。

静かな時間が流れる中、遠くでエマたちの鬼ごっこの声だけが響いていた。
しばらくして、ナマエは小さな声でぽつりと呟いた。 


「……どうしてみんな、優しくしてくれるんだろう」

「『家族だから』って、エマなら言うだろうな」

「……」


別れが辛くなるから、誰とも仲良くするつもりなんてなかった。
だけど、みんなの優しさが、どうしようもなく嬉しかった。



***



気づけば夕方になっていた。
鬼ごっこに、かくれんぼに、一通り遊び終えたエマたちが戻ってきた。


「あー楽しかったー!」


ナマエは立ち上がると、戻ってきたエマに近づき、声を掛ける。


「エマ」

「ナマエ!!」


エマはナマエの傍へと駆け寄ってくる。


「本、読んでくれた? どうだった?」


エマはキラキラとした瞳でナマエに問いかける。


「うん……すごく面白かった。もう少し借りてても大丈夫、かな?」

「もちろん! ナマエが気に入ってくれてよかった!」

「あと、えっと、その……」

「?」


何かを言いたそうにしているナマエに、エマは首を傾げる。


「……ありがとう、エマ」

「……!! うん!!」


ナマエがお礼を言うと、エマは心底嬉しそうに笑顔を見せた。
その笑顔は、夕日みたいに眩しかった。

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