第5話
それからというもの、レイ以外は部屋に誰もこなくなった。
ナマエは部屋で一人で過ごせることに安堵していた。
特に何もすることがないので、毎日本を読んで過ごしていた。
本を読むぐらいしか気を紛らわす方法がなかった、という方が正しいかもしれない。
いつものようにナマエが部屋で読書をしていると、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
レイだ。
レイはナマエの部屋に食事を運ぶ係になったらしい。
食事を持ってくるついでに、レイはナマエに質問をして帰っていく。
レイからの質問は、ほんとうに些細なことだった。
前のママの名前は?とか、フルスコアは居たか?とか、建物はここと同じか?とか。
そんな事を聞いて一体何になるんだろうか。
「……ねぇ、どうしてそんな事知りたいの?」
ナマエが問いかけると、レイは少し驚いたように目を瞬かせた。
ナマエが自分からレイに何かを質問するのはこれが初めてだったからだ。
「……ちょっと外の世界に興味があるだけだよ」
と、レイが答えた。
外の、世界。
そんな事を知ったって、良いことなんか一つもないのに。
「外の世界、なんて……」
「……?」
「なんでもない」
ナマエは読みかけの本に視線を戻す。
話はもう終わったから帰ってくれという意思表示をしたつもりだった。
「お前は、本にしか興味ないのか?」
が、通じなかったらしい。
「 ……別に。他にすることがないから読んでるだけだよ」
「ふぅん……」
早く帰ってくれないかなと思いながら本に目を向けていると、レイがこう言った。
「その小説、犯人は○○だぜ」
「!!」
ナマエは驚いたように顔を上げた後、ムッとした表情になる。
そんなナマエを見てレイは堪えきれないといったようにククと笑う。
「やっぱ興味あるんじゃないか」
「……」
ナマエはレイをジトリと睨みつけた。
「……ネタバレは、やめて」
「悪かったって。さっき言った奴は犯人じゃないよ」
どうやらからかわれただけのようだ。なんだか悔しい。
「……レイはこの本読んだことあるの」
「あるよ。俺も結構本は読むからな」
「そうなんだ」
「今日は珍しくお喋りだな」
余計な会話なんてするつもりなかったのに、つい無駄話をしてしまった。
ナマエは再び本に視線を戻す。
「……じゃあ、また明日な」
今度はちゃんと帰ってくれた。
その日から、たまにレイがおすすめの本を貸してくれるようになった。
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