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「つか今日の事まとめて忘れることにするね俺」


口ではそういいながら、忘れられるはずがなかったオレは気になってマヨナカテレビを見た。

テレビが当然のように映したのは前に見た小西先輩に似た女性だった。


『うーっす、今休憩してるとこ
花ちゃんは?友達連れて自分んちの売り上げに貢献してるとこ?』


ついこの間までジュネスで仕事してた先輩、どうやら山野アナの遺体の第一発見者だったらしい。

けど、少し前までいた先輩が


『小西沙紀さんが亡くなりました』


―――まさか、死んじまうなんて。






Channel:03






朝礼の内容は、三年の小西早紀先輩が亡くなったというものだった。
電柱に括られた状態で発見されたらしい、遺体の状況が山野アナと同じだという話でもちきりだ。
まあほとんどが他人事で好き勝手口走っているという感じだが、そんなもんだろ。
それより、


「…アイツら、鞄置きっぱなしで何処行ったんだよ…」


瀬多に花村、里中の姿が朝礼の後から姿が見えない。早退にしても荷物置いたまま、しかも三人揃ってっつーのはおかしい。
クラスの何人かが外へ出て行くのを見たとか。




「あれ、加宮かみやー、お前まで早退かー?」



「そそ、モロキンによろしくな」



モロキン―――諸岡先生なんだけどな―――が煩いというのを知った上で自分の荷物も含めて、下校した。
制服だから道々適当に聞けばわかるだろ、花村はジュネスの店長の息子だし。



そして予想通り、たまたまジュネスに行くところを買い物の帰りだった奥さんが見ていた。
家まで置きにいくのめんどくさいしなー…、直で渡すか。

そして到着したのはジュネスの家電売り場、んで座り込んでる里中発見と。


「おーい、そこのサボりいちー」

加宮かみや〜っ!」


まるで、大袈裟に言えば神様でも見つけたように里中は俺にしがみついた。勢い余って倒れそうだったのを堪える、つか里中力入りすぎ。


「あああのあのねっ!?花村がマヨナカテレビの小西先輩追いかけて瀬多くんと一緒に“向こう”にっ!!」

「落ち着けって」


混乱する里中を落ち着かせて話を聞くと、こうだ。
花村は昨日マヨナカテレビを見た女性が小西先輩だと気付いた、そして山野アナもマヨナカテレビにに映っていたと知った。
花村は“もしかしたらマヨナカテレビに映った人間は死ぬんじゃないか”と考えて、真相を知る為に瀬多と一緒にテレビの中へ入っていった。
里中は命綱を預けられたはいいが切れてしまい、どうしたらいいか解らずに呆然としていた…。と

長っ!!!


「花村のやつ…命綱なんてほぼ意味ないって気付けよな」


さてどうしたもんか、無事を確かめにいってもいいが里中一人にするのもな。かといって、ここでまごついててもな。


「…しゃーねーな、里中。二人が無事か確かめてくる、多分クマいるだろうし。そーだな…、5時まわっても戻らなかったら天城に電話しろ。アイツならお前の話信じるだろ」

「わ、わかった」



*****




認めたくなかったんだ、みっともなくて。

クマの話を聞いて、シャドウって化け物が襲ってきて、瀬多がペルソナっつーのに目覚めて。
そんな話に、出来事に興奮してる自分がいて。

―――小西先輩が死んだっていうのに、何で先輩が死ななきゃならなかったのか知りたくてテレビん中入ったのに。


『我は影…真なる我…、退屈なモンは全部ブッ壊す!まずはお前からだっ!!』

「く…っ!」

「センセイ!」


俺とそっくりのシャドウ―――俺の影が蛙みてぇな姿に変わって、瀬多に襲い掛かってる。


“いつまでヘラヘラしてるんだよ”
“なにかもウザイって思ってんのは、自分の方だっつーの”
“お前は単にワクワクしてただけなんだ。小西先輩が死んだっていうらしい口実もあるしさぁっ!”

―――…俺、先輩の事考えてなかったのかな。


『どけどけどけぇぇぇっ!!』

「ヨースケ!」


影が瀬多を吹っ飛ばして、クマが叫んでる。俺を殺そうとしてるんだ。
小西先輩も、こんな風に。


『死ねぇぇぇっ!!!』

「………っ!!」


―――殺されたのか。


何ボサッとしてんだヘタレ村ぁぁぁっ!!!


目を閉じようとして、聞こえてきた怒鳴り声と俺を潰そうとしていたそれが飛んでったのを見て、体が固まった。

ヘタレ!?ヘタレっつったか今!?
つか、何事!?


「…加宮かみやっ!?なんで…」

「質問は受け付けねーよ、クマ!簡潔に説明」

「えっとえっとぉぉ〜…とりあえずアイツ倒すクマ!」


説明になってねぇ説明だぞクマ…、にも関わらず“よし、任せろ!”ってどんだけ男前なんだ加宮かみや…。
アイツの手には輪っかが握られてる、何アレ。


『よくも俺の腕をぉぉぉ!?』

「うるせえよ」


どうやら俺の影は片腕を切り落とされたらしい、加宮かみやに。
身をひょいひょい翻して、繰り出される攻撃をかわす加宮かみやの後ろに何か見えた。

人の形をした、何か。


『おぉぉぉぉっっっ!!!』

「サイケイ、テトラカーン!」

『承知』


加宮かみやが叫んだら壁みたいなのが現れた。当たるはずだった攻撃は当たらず、弾き返る。


「瀬多、サポートは任せろ!」

「悪い!」


戦ってる、瀬多も加宮かみやも。
悔しいくらい、カッコイイ。


「畜生……っ」


気が付いたら、口が勝手に呟いた。瀬多も加宮かみやもあんなに立ち向かって、俺は…俺は…。


「…俺も強くなりてぇよ…!」


ムカつくよ、悔しいよ。
アイツらと肩を並べていたい、対等でいたい。隣に並んでいたいんだ。
手元を見る、青白い光は一枚のカードに変わった。それを空中に投げる、どうすればいいのか頭じゃなくて体が自然と理解してた。

―――先輩、小西先輩。
俺、もっと先輩を知りたかった。先輩と話したかった。
先輩はウザイって言うかもしんねぇけどさ。
でも先輩が“親は親、キミはキミ”って言ってくれた事、嘘だったとしても嬉しかったんだ。


「花村!」


先輩。


「やれ、花村!」


先輩。


「ヨースケ!」


先輩。


「…ジライヤ!」


―――ありがとうな。

****






「お前ら若いなー」

「台詞がジジィくせえよ、加宮かみや

「というか、おじさんくさいな」


いやだって、いきなり拳で語り合い始めて、大の字で横になってるお前ら見てると誰だってそう思うぞ。

いやー、青春だー。


加宮かみやも“力”使えたんだな」

「まあな」


瀬多の確認するような台詞に、俺は適当に答える。
まさか瀬多と花村がペルソナ使いになるなんてな、しかも“こっち”はシャドウがわんさかいるっつー話じゃねえか。
ミツ姉に話した方がいいんかな…、少し考えた方がいいな…。
とりあえず置いとくとして、だ。


「花村」

「ん?」

「拳で語り合える相棒ができてよかったな」


そういうと、花村は少し照れ臭そうに“おう!”と返事した。ホント、憑き物が落ちたような顔しちゃってさ。


「帰ろうぜ、そろそろ戻んないと…あ」


立ち上がり、瀬多に右手を、花村に左手を差し出して、起こしてすぐに思い出した。


「…花村、瀬多。どっちか殴られる覚悟しとけ」

「「?」」


―――現実に戻り、帰りを待っていただろう里中が逆ギレして花村にロープをたたき付けたのは、まぁ別の話。




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