08. 予想外の訪問客

すっかり日が暮れた頃、不意に玄関のチャイムが鳴った。あまり訪ねてくる人は多くないから不審に思いながら子供達に奥の自分の部屋にいるよう伝えてドアを開ける。

「サスケ、」

あまりにも予想外な人がいて驚いて声に出してしまう。

「サツキ、疲れ果てて寝ちまったから連れてきた。」

そう言って彼の目線を辿って後ろを見るとサスケに背負われてぐっすり眠るサツキの姿があった。いろいろ聞きたいことはあるけど、それどころではないのはさすがに分かった。

「そうなの。ありがとう。サツキー?お家着いたよー?」

そう言いながらサスケの背中から抱き下ろそうとするも、その体重にバランスを崩しそうになる。

「お前、サツキ幾つだと思ってんだよ。こいつの部屋まで運ぶから任せろ。入るぞ?」

そういって靴を脱いで無遠慮にあがってくる。確かに、弟のオリテと同じ歳くらいの扱いをしてしまったなと反省する。言い訳するようだが、今までこういうことは一度もなかったのだ。サツキは必ず日が暮れたら自分で帰ってくるし、妹のイチカや弟のオリテを背負って帰ってくることはあっても本人が限界まで修行することはなかった。

「部屋、どこ?」
「あ、ごめん、その突き当たり」

ぼーっとしてた自分にびっくりしながら、サスケの目の前のドアを開ける。サスケはゆっくりと背中からサツキを下ろすと布団に入れ、頭をひと撫でした。父親みたいだった。

「またな、サツキ。」

そう言ってサツキの部屋から出てきたサスケと部屋の前で突っ立ってた私が異常に近い距離で立っている。何か言わなきゃ、と思い考えあぐねる私に高い声がかかった。

「母さん、その人だあれー?」

イチカの声にはっとして距離を取る。オリテも興味津々に部屋から顔を出している。

「あ、えっと、」
「うちはサスケ。サツキの師匠だ。」

思考が追いつかない私に変わってサスケが答え、よろしくな、と言ってイチカとオリテの前に行き目線の高さを合わせる姿を呆然と見つめる。意外と子煩悩らしい。

「兄さんの師匠ー?聞いたことないよ?」

母さん知ってた?って無邪気に聞いてくるイチカに、母さんも初耳かな、って笑う。母さんお腹すいた、とマイペースに抱っこを要求してきたのは末っ子のオリテで、じゃあ俺はこれで、と立ち上がったサスケの足にイチカが絡みつく。

「イチカ、サスケさんお家に帰らなきゃだから離して。」

サスケさん、と呼ばれてくすぐったそうにするサスケを横目に、オリテを抱っこしながらイチカの頭を撫でるとムスっとする。いつもこんなに駄々こねないのに、と焦る私にオリテがお腹すいたー、と言う。

「ほら、イチカもお腹空いたでしょ?ご飯食べよ?」
「サスケくんも一緒に食べるー?」

どうしてこの子はサスケに執着するのか。サツキならまだしもイチカが。なんで、と苛立ちに似た疑問を抱く。この歳でもイケメンには弱いのか?

「いい加減にして。イチカ手洗ってきなさい。オリテも。」

普段あまり怒らないからか、少し殺気を出してしまったからか、今度は素直に言うことを聞いて洗面所へ向かった。

「ごめん、騒がしくて。サツキのこと、ありがとうね。」

今のうちに、と言わんばかりにサスケを玄関に追いやる。早く靴を履けと土間部分まで追いやる私に苦笑して、何を思ったか口を開いた。

「今夜、サクラ、実家に泊まってるから、飯ぐらいだったら、俺は、構わない。」

そういって困ったように柔らかく微笑むサスケに甘えてしまいそうになる。

「1回甘やかすとずっと甘えるよ?」

イチカのことなのか私のことなのか分からないけど、そう言うと「カカシだって俺ん家に泊まった事くらいある」と訳の分からないことを言い出した。目の前の男にいよいよ溜息を吐いた。