09. 束の間の家族団欒

結局、手を洗い終わったイチカがサスケが玄関に立ってるのを見つけるや否や、サスケの手を引いた。

「サスケくんも手洗わないとね!」

意気揚々と洗面所に連れて行く。普段私が言わないと手伝いしないオリテが率先して配膳をして、もう「サスケは帰ります」とは言えない状態になっていた。おそるべし、うちは一族の身内愛。散々イチカが騒ぎ立てたことで目が覚めたらしいサツキがリビングにやってくると、少し嬉しそうにサスケの隣に座った。サスケの隣にサツキ、向かいにイチカ、お誕生席にオリテが座って私はサスケの対角線上に座る。イチカのいただきますに合わせていただきますとハモる5人に変な感じがした。なにこの家族団欒感。

「ね、兄さん、いつからサスケくんの弟子になったのー?」

イチカもなるーと女の子全開で聞くイチカにサツキが穏やかに答える。

「中忍試験に向けて写輪眼の強化が必要で修行してたら、たまたまサスケさんに会った。」

サツキ、写輪眼使えるのか、と知らなかった事実に少し寂しくなる。

「サツキは筋がいい。俺が教えなくてもどんどん覚える。」

ま、俺はサンドバッグみたいなもんだな、とあのプライドの高いサスケから信じられない言葉が聞こえてきて思わず噎せる。大丈夫?母さん、と心配してくれるサツキとは正反対に、イチカは母など見向きもせずそれはもうサスケに興味津々だった。

「サスケくんも写輪眼できるの?すごい!見たい!」
「じゃあイチカが開眼したら見せてやるよ。」
「えー、じゃあ披露しちゃおうかな。」

え、と声を上げる私にお構いなく写輪眼を披露したイチカに開いた口が塞がらない。

「いつのまに、」
「ね、サスケくんの写輪眼見せてー」

もう「サスケくんの写輪眼」がなんか卑猥にさえ聞こえてくる。末期症状だ。サスケが写輪眼を見せたのだろう、イチカが合コンでお目当の男性を狙うOLさながらに大袈裟に褒める。

「俺に頼まなくても母さんに頼めばいいだろ」

さらっと母さんと言われると変な感じがする。

「え、母さんも写輪眼持ってるの?」

イチカが久しぶりにこちらを見る。サツキに関しては穴が空いてしまうんじゃないかというくらいこちらを見ている。くそサスケめ、と睨むも気にしていないように料理をつついている。

「ご飯冷めちゃうよ、イチカ。せっかく作ったから温かいうちに食べて、」
「ね、サスケくんと母さんって知り合い?」

私の言葉を遮ってまた質問責めを始める。

「まぁ、そうだな。」
「ね、イチカの父さん知ってる?」

今までのはしゃぐような声じゃなくて、神妙に聞いたイチカにもう何も言えなかった。それが聞きたくてサスケに縋ってたとは考えにも及ばなかった。食卓がしんと静まり返る。きっとサツキもオリテも知りたいけど、聞けないのをイチカが勇気を出して聞いただけなんだ。皆良い子だから私の前では言わないだけで、本当は自分の父親を知りたがってる。

「サスケは知らないよ。」
「母さんには聞いてない。」
「悪い、俺は知らない。ただサツキの師匠ってだけで。」

そっか、としょげて言ったイチカは次の瞬間には、サスケくんが父さんだったらイチカ、アカデミー全員に自慢して歩くのに*、と明るく言った。あぁ、こんなにも。こんなにも我慢させてたなんて、と思うと目頭が熱くなって止まらなくて静かに立ち上がってトイレに避難した。駄目なのに。1番泣きたいのはあの子達だから、と必死に呼吸を整えてトイレから出るとサスケが廊下に凭れかかっていた。

「大丈夫か?」

うん、と短く返した。

「本当のところは、どうなんだよ。」
「なにが?」
「あの時、できてたとしても、あとの2人は、」

小さく殺気を出すとそれ以上は口にしなかった。

「イチカ、イタチに似てるな。」

耳元で囁いてリビングに戻っていったサスケに、今度こそ我慢してた涙が溢れ出た。