「カカシさんと住むって言い出したの、本当だったんだ。」
引っ越しの時、荷物を持ってきた俺を見て長女が呟く。呆然と立ち尽くす少女に代わって長男が寄ってきて、持ちます、と荷物を持ってくれる。
「大丈夫だったかな?お前たちの母さんがいいって言ってくれたからお言葉に甘えちゃったんだけど。」
「うん、イチカは大丈夫。」
頭を撫でてやると額当てを手で少し直している。前に食事に来た時には随分小さかったように思ったけど、もう下忍になったのかと思うと感慨深い。その後ろでバンっと玄関が開いて次男が勢いよく入ってくる。
「母さん!サラダん家行ってくる!」
「オリテ、ただいまって言葉覚えてる?」
奥から出てきた母が呆れたように言う。ほらカカシさんにご挨拶して、と頭を下げさせる母親に、ふーん、と視線を投げかけると気まずそうに逸らされた。
「あ、待って、イチカも行く!サスケくん、全然修行見てくんないから奥さんの前で苛めてくる!」
「ほどほどにね。」
バタバタと弟を追いかけ出て行く少女を見送って隣に並んできた。子供達の背中を見送る目はひどく優しかった。
「イチカが下忍になったら修行つけてくれる、って約束してたみたいで。額当て貰ったのまだ見せてないから見て貰いたいんだと思います。」
「そ。サスケ命の血も引き継がれたみたいね。」
「残念ながら。」
「三ヶ月に一回会ってるんじゃなかったっけ?」
「下忍になってからいくつか任務も頂いているので都合が合わなくて。今回が久しぶりに会える機会なんです。」
「そ。じゃあサツキも会ってないんじゃない?」
せっせとダンボールを運んでくれていた少年に声をかけるときょとんとこちらを向いた。
「俺は、弟たちを迎えに行くときに顔見せて来ます。」
顔はサスケな癖に中身は昔の母親で何だか放って置けなくなる。ダンボールを受け取ると、やはり本心では会いに行きたかったのか、すみません、と言って玄関を出て行った。
「健気だね。」
「久しぶりに聞きました、それ。」
隣を歩きながら言われる。
「この部屋、使っちゃってよかったの?」
「もちろん。ゲストルームですから。」
「部屋の数考えたらゲストが誰を期待してたかは想像できちゃうんだけど。」
荷物を降ろして部屋の入り口に立つ其奴を見ると苦笑している。
「無意識です。」
「健気だね。」
「今のはわざとですよね。」
まだ荷物残ってます?と聞かれて、いやこれで最後、と答える。
「カカシさんこそ、ここでよかったんですか?今までのお部屋に比べたらだいぶ狭くなるのに。」
「どうせ広くても置く物もないしね。」
「悲しくなるくらい殺風景でした。」
「そうでしょうよ。」
キッチンへ行ってコーヒーを持って来てくれ、その場に座り込んでいただく。
「オリテ、サラダと仲いいんだ?」
「何か言いたそうにしてると思ったらそれでしたか。」
湯気の出るコーヒーをゆっくり飲むと彼女もあわせたようにカップを口に運ぶ。
「同い年なんです。アカデミーで仲良くなったみたいで。」
「そ。」
「うちはの身内愛って凄まじいですよね。私も驚いてます。」
「いいんじゃない?血縁、そんなに近くないんでしょ?」
ビックリしたように勢いよくこちらを見られる。引退して久しいからか感情表現も豊かになったらしい。
「どこまで知ってるんですか。写輪眼の代わりに千里眼手に入れました?」
「さぁ。ちょっと懐かしい奴の昔に何と無く似てたから。」
天才って大変ですね、と嫌味を言われ図星だったかと一人納得する。
「俺と住むこと、あいつには言ったの?」
「まだ、これからです。」
「もう長女か次男が言っちゃってるんじゃない?」
「口止めしとくべきでしたかね。」
遠くから少しずつ近づいてくる気配にほくそ笑む。わざと子供に言わせて俺に家族団欒を見せてくれようとしてたりしてね、とこっそり思った。