10. 息子の苦悩

中忍試験まではサスケが本格的にサツキを修行につけているらしく、担当上忍から話があった。職場である木ノ葉病院で春野さんからも話しかけられた。

「あの、サスケくんが、息子さんの修行をつけているそうで、」

辿々しくも話しかけてきてくれた春野さんに定型文を返す。

「ご挨拶遅れました。そうなんです、なかなか写輪眼使いっていないので大変助かってます。ありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ!サスケくん、新たな目的ができたみたいですごくイキイキしていて、こちらこそお礼を言わなくちゃって思ってたんです!」
「そう言っていただけると息子も張り合いが出ると思います。中忍試験までと聞いているので、もう少しの間お世話になります。」

そういって愛想のいい笑顔を貼り付けて、では、とその場を後にする。私って逞しいと嘲笑する。あれは牽制だったのだろうか、と性格の悪い私は疑ってしまう。言葉通り、イキイキしたらしいサスケを喜んでいるだけだろうか。イキイキしていない前の姿を知らない私にはなんとも判別つかなかった。担当の診察室に戻ると思考の対象だった黒髪が座っていてうっと構える。

「目、診てくれるんだろ?」

そういって自信満々に微笑む姿は昔のままで、悔しい。

「診るには診ますけど、治療は後日で構いませんか?少しチャクラの消耗が激しいもので。」

あくまで仕事、という態度で接するも彼には効かない。

「あぁ。」
「失礼します。」

椅子を近づけて目の様子を確認する。他の患者にもすることなのに、なぜか意識してしまう自分が憎い。

「メガネとかコンタクトとかつけないんですか?」
「コンタクトはまずいだろ。万華鏡使えねぇ。」

そうですか、私は万華鏡写輪眼持ってないもので、とひっそりと心の中でゴチる。

「メガネはサクラが嫌がる。」
「嫌がる?」
「なんか知らねーけど、外ではつけるなとか破壊力がとか。」
「愛されてますね。」

自覚なく惚気る姿に相変わらずそういう分野には疎いんだな、と呆れにも似た感情が沸き上がる。当てていたライトを外し、目閉じてください、と声を掛けてチャクラを使って調べる。

「チャクラの消耗が激しいってどのくらいだ?」
「重篤患者10人見るくらいですかね。」
「へぇ。それって分身解いててもそうなのかよ?」

ぴたりと手が止まる。

「どういう意味?」
「そのまんまだ。もう今はしてねーのか?」

動揺して精緻なチャクラコントロールが必要な医療忍術が使える訳もなく、ただ目の上に手を翳してる状態になる。

「サツキ、全部気づいてるぞ。」
「な、どういう、」

意味のなくなった手を降ろさせられ、漆黒の目に捉えられる。

「お前が仕事と家と仮眠で影分身ローテしてんの、サツキは気づいてる。」

がん、と鈍器で頭を殴られたような衝撃だった。

「まぁ、影分身かどうかまでは気づいてねーと思うがな。心配してたぞ。」

何も言えなかった。

「オリテだっけ?あの1番小せぇ奴ももうアカデミー生なんだろ?1体で足りるんじゃねーのか。」

そういって椅子から立ち上がって背を向けるサスケに何も言えない自分が恥ずかしい。

「じゃ、治療できるようになったら教えてくれ。」

ガラガラと診察室を出ていったサスケがいた場所をずっと見つめる。サツキは知ってて私を心配しつつも、何も言えずサスケに相談したという事なのか。なんて情けない。私、上手くやれてるつもりだったのに。全然逞しくなんてなかった。