一旦頭を冷やしてくる、と言って外に出る。痛いくらいに火影室で名前に投げかけられた言葉が身に沁みた。
『ちょっとサツキから事情聞いたからって偉そうに説教たれてんじゃないわよ、ウスラトンカチ。1人で産んで1人で育てるって決めたのよ。それを全うしてるだけじゃない。なんでふらっと帰ってきてふわっと関わったあんたにそんな事言われなきゃなんないのよ。』
「ぐうの音も出ねえな。」
「なーにやってんのよ、任務放ったらかして。」
聞き覚えのある間延びした声に振り向けば、カカシが居た。
「あんたこそ火影室抜け出して大丈夫なのかよ。」
「んー、優秀な部下がいるから大丈夫でしょ。」
シカマルに心の中でそっと同情する。
「名前、目覚める気配ないの?」
「あぁ。それで子供達も不安になってるみたいだ。」
「そこにサクラ連れ込んじゃったんだ?」
「知ってたのか。」
「サクラがすごく申し訳なさそうに謝りに来たよ。サスケくんの任務邪魔しちゃったって。」
持ち合わせていた煙草に火をつける。
「そしたらシカマルが顔真っ青にして、あいつ、もっと前提条件言えよ、とか言い出して。」
紫煙が寒空に広がる。
「心配になって来てみたんだけどね。」
来て正解だったよね、とくつくつと笑う。
「どうすりゃよかったんだよ。」
「まぁ、お母さんが目覚めないかもって心配してる子の所に、他の子連れのお母さん連れてっちゃぁ駄目でしょ。」
言われてたしかに、と落ち込む。
「あと、サツキくん、だっけ?あの子は期待してたかもよ。」
「期待?」
「お前が未だ見ぬ父親なのかもって。」
「…知ってたのか、」
「似てるなと思ってカマかけただけだけど、その反応だとそうだったみたいネ。」
やられた。
「女の子ってよく見てるからさ。そんなお兄ちゃんの些細な心の揺れが見えちゃったんじゃない?」
イチカの怒った声と真っ赤にした目を思い出す。
「俺、最低だな。」
「でもま、奥さんが不安がってたら取り除きたくもなるよネ。」
「、どうすりゃいいんだよ。」
「もう名前に起きて貰うしかないでしょーよ。側から見たら無謀な作戦だったけど、実際それが上手くいっててそれしかないからそうしてたんでしょ、名前だって。」
「無駄な口出しだったってことか。」
「そうでもないんじゃない?子供達も母親の偉大さ分かっただろうし、名前の身体ももう限界だったろうしね。」
「だといいけどな。」
「少なくとも後半は本当だよ。お前が帰ってくる前に健康診断があったんだけど、綱手様が驚いてた。どうやったらここまで身体を酷使できるんだって。」
煙草の煙を肺いっぱいに吸い込む。
「見た目じゃ全然わかんないんだけどネ。あの子医療忍術使えるでしょ?それで見た目だいぶ誤魔化してたみたいよ。」
身体に繋がれてたいくつものチューブを思い出す。
「まぁ、でもここまでしてでも体力回復させて成し遂げたいことでもあったのかもネ、名前も。じゃなきゃいくら売り言葉に買い言葉でも、あんなに大事にしてた子供を危険に曝さないでしょ。」
ふと名前との会話が頭に浮かぶ。
『へぇ。それって分身解いててもそうなのかよ?』
『サツキ、全部気づいてるぞ。』
『じゃ、治療できるようになったら教えてくれ。』
『安心しろ。こいつらは俺が守る。』
はぁ、と深く息を吐いて頭を掻く。
「早く起こしてあげたら?」
その言葉に背中を押され、煙草の火を揉み消して急いで玄関へと向かう。手遅れになる前に。