17. 帰ってきた日常

部屋に入ると3人が驚いたような顔をする。

「母さん起こすぞ。」

そう言うとイチカがパッと顔を上げる。

「そんなことできるの?」
「知らねーよ。やってみるだけだ。」

迷いなく名前の部屋へ向かう俺の後を3人が続く。

「名前、起きろ。」

まずは身体を揺すってみるが反応がない。

「名前、」

子供達が不安になるのもわかる。これじゃあまるで死んでるみたいだ。急に不安になって、あれこれ刺さってたチューブを丁寧に引き抜く。

「母さん。」

心配そうなサツキの声がする。

「オーロラは王子様のキスで目覚めるよ?」

場違いな明るい声でイチカが言う。

「誰だよ、オーロラって。」
「眠りの森の美女。」

お伽話かよ、と思いつつも真剣に言うイチカを無下にも出来ず、何回か頭を掻いて軽くキスをする。寝込み襲ってるみたいで後味は悪いのに、あの時のことを思い出して懐かしくなる。名残惜しくてもう一度優しく唇を重ねると、んん、とくぐもった声が聞こえる。

「名前。」

自分でも驚く程優しい声で呼んでいた。もう一度、今度は深く口付ける。薄っすらと目が開いてぼんやりと視界を確認している様子が目に入る。名前の腕を首にかけてそっと身体を起こしてやる。自分でやっておいてなんだが、キスを要求されてる気分になって思わず舌をねじ込む。やっと意識がはっきりしてきたらしく瞬きをして弱い力で肩を押された。その弱々しい抵抗が庇護欲を唆る。お互い嫌い合って別れた訳じゃない、タイミングが合わなかっただけ。昔の綺麗な思い出が溢れ出てくる。

「さ、すけ、」

合間に甘えた声で名前を呼んでくる名前に自然と腰に回した手に力が入る。煽ってんのか、こいつ。

「サスケ!」

先程よりも強い力で押され、距離が出来る。真っ赤な顔して唇を手の甲で押さえる姿は3児の母とは思えない程ウブだった。

「悪い、」

そういえば、ご丁寧にガキ3人とも連れてきたんだったと思い返してドアの方を見ると、サツキに目を隠されたイチカとオリテがその手を外そうとしており、当のサツキは顔を真っ赤にして佇んでいた。

「悪い、サツキ」

そう言うとチビ2人の目隠しを外す。

「母さん!」

オリテがベッドに飛び乗って、イチカとサツキが近くに寄ってくる。

「ね?効いたでしょ?」

得意げに言うイチカに照れながら、そうだな、と返す。何が?という表情の名前と恥ずかしそうなサツキが目に入った。