「母さん起こすぞ。」
そういったサスケさんの後ろを追って母さんの部屋に向かった。
「名前、起きろ」
何度か揺するが一向に目覚める気配はなさそうだった。医療器具を丁寧に外していくサスケさんに、イチカが変な提案をする。お伽話の話だろ、と思ったけど、さっきイチカに帰っていいよと言われたばかりのサスケさんはその意見を無下にできないようだった。
「名前。」
意を決したように母さんの名前を呼んだその声はひどく優しくて、まだ母さんを好きなんじゃないかと錯覚した。サスケさんの奥さん登場で粉々になっていた、俺の心にひっそりと飾っていた理想の絵が復元し始める。母さんとサスケさんと俺。チュッと小さくリップ音が響いてサスケさんの顔が離れる。もう一度、もう一度と何度も試すサスケさんも、母さんが目覚めないんじゃないかと焦っていたんだろう。母さんを半ば無理やり起こして座る体勢にさせる。サスケさんにしがみつくようにして座る姿に、母さんもサスケさんをまだ好きなのかも、と思った。
「さ、すけ、」
小さく、いつもとは少し違う声だけど声を出した母さんに安堵する。よかった、目覚めたみたい。と思うのも束の間、サスケさんのキスが濃厚なものに変わる。慌てて妹と弟の目を自分の手で隠して見せないようにする。手を剥がそうとするけど、こいつらはまだ見ていい年頃じゃない。
「サスケ!」
いつもの母さんの声が聞こえて、サスケさんが謝る声が聞こえた。そして、ふと2人と目が合うと申し訳なさそうにもう一度謝られた。その言葉を聞いて力を入れていた手を外すと、オリテが走り出す。イチカの背中を押してベッド脇に行くとイチカが得意そうにサスケさんに話しかける。結果オーライってこのことだな、と小さく息を吐いた。