「なぁ、あの時に言った言葉、覚えてるか?」
「もう正直あんまり覚えてないんだよね。」
なんて、嘘、全部ハッキリ覚えてるのに。右耳に髪をかけて心を落ち着かせて、サスケに幸せを崩して欲しくなくて咄嗟に嘘をつく。
「お前、ほんと嘘下手だよな。」
そういって伏せた目で笑うサスケは綺麗で、じっと見てしまった。
「俺もずっと、覚えてた。強くなってお前を迎えに行くから、だから、そのときまで忘れるなよって。」
その言葉に視界が滲む。今更、捻れ切った路を歩きながら縋ってきた思い出を引っ張り出さないで欲しかった。
「大戦が終わって里に帰って来た時、お前のチャクラを感じなかった。お前、昔から見合いとか色々行かされてただろ?それで、遅かったのか、って。」
「うん。」
「失意の中沈んでたのをサクラが引っ張り上げてくれて。こんな俺を何があっても思ってくれて。好きかどうか分からないって言っても、それでも構わないからって。」
「強い子だね。」
「あぁ。」
「サスケにはそういう子が必要だったんだよ。」
「かもな。初恋は叶わないって言うしな。」
「…たまにでいいから、サツキのこと、見てあげてくれる?」
「当然だ。」
「ありがと。」
時計を見るとずいぶん遅い時間を指していた。
「ごめん、こんな時間まで。」
「気にするな。」
そういってお客様用の布団を出そうとすると、それを手で制される。
「今から帰るの?」
「いや、それはさすがに辛い。」
サスケでも辛いと思うことはあったらしい。
「お前のベッド、セミダブルだったよな。」
そうだけど、何、何で知ってるの?じゃなくて何で気にしたの?
「だ、だめ。それはだめ。」
急いで立ち上がって部屋に向かう。
「布団使いたかったらそこの使って。じゃあね、おやす」
み、と言うより早くベッドに寝転がる客人が視界に入る。
「何もしねーから。」
それ、世界で1番信用ならない言葉なんですけど。
「名前。」
優しく諭すような声で名前を呼ばれると、心のガードは簡単に崩れ落ちる。
「そんな声で呼ぶのずるい。」
ポンポンとサスケが叩く場所におとなしく入ろうとしてしまう自分が嫌い。
「サスケって自分が格好いいって分かってるタイプだったんだ。」
「?何言ってんだ、お前。」
ちゃんと壁側に用意してくれた私のスペースに入り込むと、ご丁寧に布団を掛けてくれる。
「昔、よくこうして寝たよな。」
お前が眠れないとき、何度一緒に寝てって頼まれたか、ってニヤニヤ笑いながら言うサスケは最強に意地悪な顔をしている。
「それがずっと続くと思ってた。ずっと。」
漆黒の双眼に見つめられて目を離せない。
「名前、愛してる。」
今、それを言うなんて酷い、という言葉を必死で飲み込んで、心が引き千切れそうになりながら壁側を向いた。私だって愛してる。