中忍試験を明日に控えサスケに忍鳥を飛ばす。相変わらずサツキの修行に付き合ってくれているらしいが、あの日以来会っていない。朝起きると隣にいたはずのサスケは居なくなっていて、枯れたと思ってた涙が溢れ出た。
「ようやくかよ。」
診察室に入って来たのはいつもと変わらないサスケで、胸がギュッと締め付けられる。
「ん。遅くなってごめん。」
前回同様、椅子に座って目を見せて貰った後、治療に取り掛かった。
「痛かったら教えてくださいね。」
閉じられたまぶたの上に手を翳す。ブーンとチャクラを練って傷ついた視神経を1つひとつ修復していく。正直言って亡くなる直前のイタチさんより酷かった。1回では治らないかもしれないが、なるべく見えるようにしてあげたい。明日は中忍試験の日だ。肉眼で我が子の活躍を見せてあげたい、その一心だった。
「明日は行かないと思う。」
そう言われたとき、プツンと治療の手が止まった。
「え?」
「サツキの試合、見に行けない。」
その言葉を聞いて目頭がかぁっと熱くなる。サツキ、あんなに楽しみにしてるのに。サスケさんに修行のおかげだって見せるんだ、って張り切ってるのに。まだ目を瞑ったままのサスケの前でボロボロと涙を流す。
「な、何かあるの?」
みっともなく震えた声に、サスケも目を開ける。少し驚いた表情の後、決まり悪そうに、目を逸らされる。
「そっか。私、なんか、サスケは来てくれると思っちゃってて、それで肉眼でサツキの姿見れたらいいなって、勝手に、」
そこまで言って言葉が出なくなった。だめだ、しっかりしないと。1番悲しいのはサツキなんだから。私の所為で期待してしまってるサツキが1番悲しいんだから。
「名前、」
「あ、でも、治療はちゃんと行いますから、心配しないで下さいね。」
「名前。」
「深刻な状態なので1回で全回復とは行きませんけど、できるところまでは、」
「名前!」
2人だけの診察室全体に響くくらいの大きさで叫ばれて観念してサスケの方を見る。
「見えないんだよ。今の俺じゃ、あの広い会場でサツキの姿見つけることができるかどうか。」
「だから今日治療にしたんでしょ、ウスラトンカチ。」
目瞑って、というと素直に従う。
「私のこと信用してないのはよく分かったけど、絶対見えるようになるの。」
「サクラに言われた、血継限界が絡んでるから難しいって。」
いつも強気のサスケからは考えられない程弱々しく言う。あと、もう少し。額に汗が滲み始める。この部分を越えれば。
「だから無理しなくていい。明日お前が見に行けなかったら元も子もない。」
よし、あとは視神経を編み直すだけ。
「チャクラ切れで目覚まさないとかシャレにならないだろ。」
んーギリギリもつか、もって、お願い。
「名前、もういい。」
「よしっ。」
そう言って体の力が抜けてサスケに雪崩かかる。
「ご、ごめん。ちょっとだけ支えてて。ゆっくり、目開けてみて。」
大人しく私を支えたまま長い睫毛が動くのが見える。
「それ、この前の返事か?」
サスケの嬉しそうな声を聞いて意識を手放した。