25. 中忍試験

「起きろ、ウスラトンカチ。」

ベッドで未だ眠るそいつを揺するも全く起きる気配はない。早めに来てみて正解だ。昨日の治療の影響か、爆睡してやがる。

「サスケくん!キスしたら起きるかもよ!」

イチカが目をキラキラさせて助言してくる。

「その手には乗らねー。」
「でも早くしないと兄さん家出る時間になっちゃうよ?」

そういって悪戯顔を向けられる。誰に似たんだ、こいつは。

「名前。」

ぴくともしないそいつの鼻を軽く摘んでやる。苦しかったのか、目を覚ました。

「おはよう、お姫様。」

まだ覚醒していない頭で処理しているのか固まってる名前は、俺とイチカを見比べて顔をさぁっと青くした。

「、今何時?」

時計がもうすぐ8時を指そうとしていた。

「わー、ごめん、サツキ。私なんで今日に限って。」

リビングに飛び出ていってサツキが準備万端な姿を確認する母親。

「…バッチリだね。気をつけてね。」
「うん。ありがと。いってきます。」
「いってらっしゃい!あとでね!」

寝間着のまま玄関の外までサツキを送って戻ってきた名前に視線を向けると、悔しそうに起こしてくれてありがと、と言った。

「着替えないと遅刻するぞ。」

え、うそ、と慌てる名前にイチカとオリテが不思議そうな顔をする。

「母さんが寝坊なんて珍しいね。」
「夜何してたのー?サスケくん」
「何もしてねーよ」

俺が夜帰る所お前見送っただろ、というと、えー?サスケくんは信用ならないからなー、と笑う。この歳でも女は女なのか、怖ぇな。

「おまたせしてごめんね。」

そうこうしていると準備を終えて名前が部屋から出てきた。いつもよりちょっとおめかししてて、年相応に見える。

「母さん、今日綺麗だね。」
「え、あ、ありがとう、イチカ。」
「キレー!」
「ありがとう、オリテ。」
「ね!サスケくん!」
「いや、俺は、別に、」
「えー、趣味悪いー、可愛いよー?母さん。」

天然に虐め抜いてくるイチカに名前が、サスケ困るからやめてあげてね、と告げる。

「じゃあ出かけますか!」

母の言葉に、はーい、という2人の元気な声を聞いて会場に向かう。会場に着いて席に座ると、名前の緊張はピークに達したのか、そわそわし出した。

「お前の試験じゃねーんだから。」
「そうだよね。はー、でも緊張するー。」

そう言って両手をこする姿は息子を心配する母親のそれで、微笑ましくて自然と*が緩む。ふと視界に同じく中忍試験を見にきていたらしいナルトやシカマルの姿が入る。ちょっと席外す、と言うと、うん、と浮ついた様子の返事を受ける。一言二言交わしに席を立つ。

「よぉ。」
「おぅ!サスケも来てたのかってばよ。」
「あぁ。カカシのお守りも今日は休みか。」
「まぁ、こんな日はな。」

同期との会話の合間にチラリと自分がいた辺りに目をやる。席から見えたサツキに手を振ったり、暴れ回るオリテを宥めたり忙しなく動き回る姿があった。相当緊張してるな、これは、とこっちまで心配になる。ふと自分の中忍試験の時が重なる。あの時もこんな風に見ていたんだろうか。そんな俺の視線の先を辿ったのか、誰だってばよ?と聞かれる。

「教え子の母親。長男が戦う姿初めてみるらしくて、見てて痛々しいくらい緊張してんだよ。」
「母親、って俺らと見た目変わんねーってばよ。」
「実際同い年だ。」

え、と声をあげたナルトは、計算を始めたのかうんうんと何か唸っている。

「苗字って、サツキの母親って、あいつかよ。」

名前だけは知ってたらしいシカマルも驚きの声をあげる。

「あいつ、アカデミーには通ってなかったからな。」

そういやあんまり知り合いいねーってボヤいてたっけ、というと、シカマルが何か言いたそうにこちらに視線を送る。何だよ。

「あ、ナンパされてるってばよ。」

ナルトの声に視線の先を辿ると、元気一杯のチビたちに話しかける風を装って名前に話しかける隣の青年の姿が目に入る。当の本人は愛想のいい笑顔を貼り付けて、青年と少し距離をとっている。

「今日サクラは?」

シカマルに聞かれて、イノたちと観るらしい、と答えた。前に任務を邪魔したうしろめたさがあるらしい。

「そうかよ。」

何か言いたげに放たれた言葉が聞こえた瞬間、青年がボディタッチをしだしさすがに困惑した表情を浮かべた彼女の姿が見えた。じゃあまたな、と2人に告げて席に戻る。

「名前」

声を掛けると、青年が驚いたように固まり、少し距離を開けた。半ば強引に青年との間に割り込む。分かったのか分かってないのか1つ通路側にずれながら、ありがとう、と礼を言われる。次はサツキの出番だった。

「サツキか。」

そう呟いた俺にふと思い出したように、見えてる?と聞いてきた。あぁ、と答えると、よかった、とホッとしたような声が聞こえて心があたたまる。試合が始まって前半はサツキの得意の術がハマってぐいぐい押していたが、中盤から雲行きが怪しくなる。

「どうしよ、サツキ、あんなに怪我して、」

自分だって同い年の頃にはあれくらい怪我してたくせに、息子のこととなると途端心配になるらしい。

「大丈夫だ、冷静に闘えてる。まだ特訓した技も温存してるみたいだしな。」
「そうなの?」

そう言って名前がサツキに視線を戻す。ふとサツキが観客席を眺め、俺と名前が居るのを確かめた。小さく頷いてやると、サツキが頷き返す。次の瞬間、観客がどよめく。サツキの眼に写輪眼が浮かんでいた。そこからサツキがまた盛り返す。そして、あっけなく、勝者 苗字サツキの掛け声が響き、会場全体が歓声をあげる。

「わー兄さん格好いいー!」

叫ぶイチカと、オリテを抱きかかえ手を振らす名前が見えたのか、サツキは照れ臭そうに手をあげた。そのまま視線を横に、俺が拍手している姿を見て嬉しそうにした。全て視える。

「写輪眼、そっか。」

観客の鳴り止まない拍手喝さいの中、いつの間にかオリテを座席に下ろした名前がポツリと隣で呟く。

「何だよ、そっかって。」
「私たちの戦う時って結構序盤から写輪眼使うでしょ?その方が楽だから。」
「あぁ。」
「でも使わなくてもここまで出来るぞって見せた後の写輪眼、格好良かったなって。」

そうやって幸せそうに笑う姿を見てると、修行したかいもあったってもんだ。

「親バカだな。」
「いいんですー。うちの子たちが世界一可愛いんだから。」

茶化すと開き直ってそう言う。

「ありがとう、サスケ。私だけだと、教えてあげられなかった。」
「優勝するまで感謝は待っといてやるよ。」

本当すごい自信、どこから湧いてくるの、と*を赤くして言う姿がくっきりと視える。視える世界に戻ってきた感覚がこそばゆかった。