26. お祝い

「サツキ、中忍昇格おめでとう!かんぱーい!」

かんぱーい、とオレンジジュースの入ったグラスのぶつかる音が響いた。トーナメントを順調に勝ち上がり、自信満々に宣言したサスケの言う通り優勝したサツキは、文句なしの中忍昇格だった。

「ありがとう。母さん。サスケさん。」

そう照れ臭そうに笑った姿は今まで見たことのないサツキの姿で、胸がいっぱいになった。つられたのか、普段感情表現の薄いサスケにしては珍しく、サツキを抱きしめ、サツキはそれに目を潤ませる。

「中忍試験までってお願いだったから、もうサスケさんにも見てもらえないんだね。」

寂しいな、とサツキが初めて弱音を吐く。

「じゃあ、来年はイチカが中忍試験受けるから、修行付けに帰ってきてね、サスケくん。」

サスケ顔負けな自信満々の表情でそういうイチカに、この子は本当にやりそうだな、なんて不覚にも思ってしまう。

「あぁ。まずは下忍になれよ、イチカ。」
「分かってるもん。サスケくん意地悪。」

格好いいからって何でも言っていい訳じゃないんだよー?と*を膨らませる。

「どこで覚えてくるんだか、そんな表現。」

呆れた声色とは反対に*が緩むのを感じた。

「母さん」

一転真剣な声色で長男に呼ばれる。

「ん?どうしたの。」
「俺、」

一息区切って、言いづらそうにする。家を出てサスケの旅についていきたい、とか言い出したらどうしよう。思わず表情が強張る。

「うちは姓を名乗っても、いいかな?」

心配は取り越し苦労に終わったけれど、意外すぎる提案だった。

「え、兄さんうちはになるの?いーなー、イチカもうちはがいいー。」
「僕も!」

便乗して3人で盛り上がり始める。

「母さん?」

何も発せない私にサツキが顔を窺ってくる。どうしよう、とその言葉だけがぐるぐる回る。

「いいんじゃねーの。」

気楽な声が聞こえて、キッとそちらを睨む。

「サスケは黙ってて。」
「名乗りたくても、今うちはって名乗れるのは俺とお前ら以外にいねーんだぜ?こんな贅沢ないだろ。」

うちはラブなサスケの全く参考にならない意見を頂戴する。

「あのね、うちはを名乗るってことは、その血を狙われる可能性が増えるってことなんだよ?」

諭すようになるべく優しく、3人の目を見て話す。

「私は戦闘タイプじゃないし、みんなが別々の任務につくようになったらそれこそ、そうそう助けになんて行けないの。」

偽りのない本心で話すと、それが分かったのか皆大人しく聞いてくれる。

「ただでさえ忍って危険と隣り合わせなのに、余計な危険、背追い込んで欲しくない。」

カラン、とオレンジジュースに入っていた氷が溶けて音が鳴る。

「約束しても約束を守れないときだって出てくる。そしたら、」
「母さん、」

初めてサツキに言葉を遮られた。

「もう、俺が写輪眼を持ってるって、里中の人が、中忍試験を見に来てた他国の人が皆知ってる。」
「っ」
「どっちみち、俺たちはうちはの血からは逃げられないよ。良くも悪くも。」

最近弱っている涙腺に歯止めが聞かない。

「それなら、俺は、この血に、この名前に、誇りを持って生きたい。」

いよいよ泣き出した私を、いつの間にか私と同じくらいの身長になっていたサツキが抱きしめる。

「大丈夫だよ、母さん。ちゃんと帰ってくるから。」

いつかのサスケと重なって涙が止まらない。私なんかよりずっと大人な息子に背中をさすられしがみつく。サツキはサスケじゃないって分かってる。分かってるのに、止められない。

「サツキ、」
「俺、もう中忍だぜ?自分の身は自分で守れる。」
「うん。」
「心配?」

体を離しながら困ったようにそう問われる。クスッと笑って、しょうがないな、と心の中で区切りをつける。

「心配。どんなに強くなっても、上忍になっても、もし火影になっても、私はサツキが心配。イチカが心配。オリテが心配。ずっと心配なの、多分。だから、気にしないで。親って勝手に心配してるもんだから。」

キョトンとしながらこちらを見つめるサツキは、そっか、とだけ答える。

「うちは姓ね。火影様に相談してみるね。」

そういうと3人が嬉しそうに笑った。