27. うちは復興

火影邸に向かう道。1人で行ける、と言い張る名前に半ば強引についてきて2人並んで歩く。

「もうちょっと泣き腫らした顔がひいてから来てもよかったかな。」

そういってクスッと笑って睫毛を下げる。

「カカシはそんな野暮なこと聞いたりしねーだろ。」
「そうだね。」
「サツキ、成長したな。」
「両親より大人かもね。」

何気なく両親、と放たれる言葉に心が揺れる。

「ありがとう。サツキのこと。」
「前も聞いた。俺も目治してもらってる、おあいこだろ。」
「ふふ、サツキ、誰に似たのかな、イタチさんかなって思ってたけど、違ったみたい。」
「そうかよ。」

火影室の前で並び、名前が隣で1つ深呼吸をしてからノックする。どーぞ、といつもの間延びした声が返ってきた。

「失礼します。火影様。」
「ん、いらっしゃい。」
「あの、お忙しいところ恐縮なのですが、姓名変更に関しての相談を、」
「うちはに戻すの?」

戻すの、という響きに、カカシは知ってたのか、と今更ながらに思う。

「はい。息子たっての希望なもので。」
「サツキね。いい闘いしてたじゃない、中忍試験。」
「ありがとうございます。本人にも聞かせてやりたいです。」

そういって誇らしげに笑う。

「今、うちはの当主はサスケなんだよね。ま、ついて来たってことは特に異論ないんだろうけど。」
「あぁ。」
「ん、じゃあ俺からは何も言うことはないよ。おかえり、名前。」

ちらりと横を盗み見ると満面の笑みを浮かべていて、カカシとは知り合いだったのかとふと思う。

「ありがとう、カカシさん。」
「知ってたのか。」

気づけば口に出していて、嫉妬してるみたいで気恥ずかしくて、子供のこと、と続けた。カカシはぽりぽりと*をかきながら答える。

「まぁ直接名前の口から聞いた訳じゃなかったけど、ほらタイミング的にどう考えてもそうでしょ。」

飄々と言う様子にやっぱり敵わないなと感じてしまう。

「それで、サスケ、目の治療をして貰ったって聞いたけど、その後経過はどうよ?」
「あ、あぁ、それは何の問題もない。イタチとやり合う前ぐらいまで視力は戻ってる。」
「じゃあ85%ってとこ?」

尋ねる名前に、まぁ、そうだな、と返す。

「ちょっとチャクラまだ溜めれてないからすぐは無理だけど、来週くらいにはもう一回診れるから。まだそれまではいる?でしょ?」
「ギリギリ、だよねー?」

カカシに意地悪く言われ、バツ悪く感じる。

「もともと1ヶ月って言ってたから、こいつ。」
「そうだったんですか。じゃあ、なるべく急いでみます。」

火影室を後にして、途中まで送ると言って行きと同じように並んで歩く。

「ついにうちは復興だね。一気に4人人数が増えますが、いかがですか、当主?」

茶化して聞いてくる姿に笑みが溢れる。

「フン、大貢献だな、お前。」
「でしょ?褒美は奮発してくれいいよ。」

またふざけたように言う。

「何がいい?」

半分本気で聞くと、サツキ・イチカ・オリテの修行をつけてほしい、と言われた。

「冗談抜きで、イチカが中忍試験を受ける前にも修行をつけてほしいし、サツキも上忍目指すだろうからどこかで必ず壁には当たるんだよね。」

真剣な顔でそう言う。

「サスケばっかにお願いしちゃって申し訳ないけど。」
「それくらい頼れ。」

ふわっと笑ってありがとう、と礼を言われる。そして、そういえば、と思い出したように話しかけてくる。

「サラダちゃん、抱っこできた?」
「まだ、会ってない。」

そういう俺に心底驚いた顔で、会ってない?、と聞き返す。

「あぁ。」
「あぁ、じゃなくて。え?中忍試験前の1週間、家に帰ってたよね。」
「帰ってた。」
「その時は?避けてたの?」
「いや、俺は避けてない。」

俺は?と恐る恐る聞かれる。

「あいつ、実家に帰ってる。」

口をあんぐり開けて、足を止めた姿を見て間抜けな面、と失礼なことを思う。

「何やってんの、いや、私がお願いして散々押し付けておいて何だけど、サツキの喜ぶ顔見て幸せ感じちゃってたけど、こんなことしてる場合じゃないでしょ。」

私は今怒ってますと言わんばかりの剣幕に押される。

「シカマルにも言われた。」
「言われた、じゃなくて。今から迎えに行って。」
「もう、手遅れなんじゃねーかな。」

何が、と聞いたことのない低い声で言われる。

「なぁ、俺たち、タイミングが悪かったよな。」

その言葉に黙りこくる名前の方を見る。目が合って、どちらも逸らさない。

「ごめん、この何週間か、そこに付け入るようなことした。」

そう言って長い睫毛を伏せ、反省の色を浮かべる。

「あの紙、視力検査のためだけに用意したのか?」

ピクっと肩が揺れて、睫毛が下がって、長い髪を耳にかけた様子が見える。そして落ち着いた声で一言。

「そうだよ。」

わかりやすく嘘をつく名前に、ため息を吐く。涙でにじむ目には説得力のかけらもない。

「子供たちに写輪眼を習得して欲しかったから、それで、サスケの弱みにつけ込んだの。そうしたら、優しいサスケは断れないでしょ?罪悪感を感じて助けてくれるとわかってた。」

一度も目を合わせずそう言って、私にはあの子たちが一番だから、と今更なことを口にされる。知ってるよ、そんなこと。

「でも、別にサスケに戻ってきてほしいとかそう言うのじゃなくて、ほら、シスイさんだって家族じゃないけどよく遊んでくれてたでしょ?」

もう今にも零れそうな涙を必死に流さないようにして、矢継ぎ早に話す姿に、そこまでしてサクラと別れて欲しくないのか、と少しイラっとする。

「うちの子には、他にも、父親、探せる、から」

そう言っていよいよ*を伝った涙を俺に見せないように急いで拭う。他にもって誰だよ。

「だから、カカシさんがサスケにしたように、師としてあの子たちに接してくれたら、私はそれで幸せなの。」

それは本心らしかった。

「そうかよ。」

そう言って、まだ名前の家までは距離があるけど、一緒に歩ける気がしなくて、違う方向に足を向けた。無意識だけど、サクラの実家のある方に向かう。嘘だと分かっていても心がキリキリと痛んだ。