「行ってくる。」
いつもの日帰り任務の時と変わらない口調でそう言うと、大きく膨らんだバックパックを背負う。
「うん。気を付けてね。」
自分で発したのか分からないくらい不安げな声だった。
「心配するな。1週間で帰ってくる。」
戸締まり、ちゃんとしろよ、と言って背を向ける彼に、いってらっしゃい、といつものように声を掛けた。サスケが里にいないのはひどく不安で、普段どれ程彼に依存しているのか嫌でも実感する。そして私も任務行かなきゃ、とぼんやりと思う。
「初めまして。カカシ先輩の後任のテンゾウです。」
私の頭に手を乗せた猫面の人に、カカシさんは私の担当だったのかとそこで知る。
「初めまして。戦闘タイプではないもので、一緒に任務に就いて貰えるの、すごく心強いです。よろしくお願いします。」
頭を下げると少しくすぐったそうな声で、僕に任せて、と言われた。カカシさんなら憎まれ口きかれてたな。随分純粋そうな人なのであまりからかわないでおこう、と胸に決める。
「今回は3日間の任務で、単発以外は初めてって聞いたけど、大丈夫かな?」
「はい。期間が延びるだけなので。」
安心したように私に背を向けておぶる格好をしてくれる。
「あの、私、そんなに速くないけど、一応走れます。」
驚いたように振り返られ、カカシさん、そんなことまで律儀に引き継いだのか、と意外に思う。
「そっか、ごめんごめん。」
明るく笑って、じゃ行こうか、と私を気遣うように走ってくれる。久し振りの任務だった。3日間の任務が終わって無事帰還してもまだサスケは帰って来ていなかった。やはり予定通り一週間はかかるのだろう。残りの3日は里内で拷問班と一緒にいくつか任務をこなすことにした。
「カカシの秘蔵っ子、生きてたか。」
最近見ねーから心配したぞ、とドスのきいた声で強面に話しかけられる。全くもってカカシさんの秘蔵っ子ではない。
「イビキさん、ご無沙汰しております。」
なかなか来れずすみません、久しぶりなのでお手柔らかにお願いしますね、と笑顔を張り付けると、変わんねーな、と笑われる。
「なーに、イビキ、こんな小さな子までいじめてんの。」
見境ないわね、と豪快な出で立ちで女性がやってくる。
「アンコ、一応お前の先輩だぞ、こいつ。」
意地悪にそう言いニヤニヤと笑うイビキさんと固まるアンコさんにため息を1つ。お前がくる1年前からうちで任務受けてるからな、と言う言葉にアンコさんは最近拷問班に来た人なのだと知る。
「たまたま私にもできる任務をいただく機会があっただけですよ。嫌味な言い方やめてくださいよ。」
イビキさんに言うと余計にアンコさんが口をあんぐり開ける。
「あんた、いくつよ。」
その言葉の後ろからガハハと豪快に笑う声が聞こえてくる。拷問班らしいサディストな先輩にうんざりしながら任務の説明を受ける。カカシさんの薦めで今までのようなお見合い任務だけでなく幅を広げるためにと1年ほど前から拷問班にもお世話になるようになったのだ。といっても、私の出来ることに幾分違いはないので、いつものように瞳術でコントロールして情報を引き出すくらいしかできることはない。拷問の合間に話相手として近づく、古典的なやり方だ。任務が終わると医療忍術の練習をしてサスケの帰りを待つ。残り3日が長かった。
「早く帰って来ないかな、サスケ。」
ぽつんと呟いた言葉がやけに広く感じる家に響いた。