そういや、帰ってきたらしいな、カカシ、と声を掛けられて、それはサスケの帰還を意味すると即座に脳内で変換される。
「満身創痍で病院送りらしいけどな。」
付け加えくつくつと笑うイビキさんを見る。
「カカシさんが?班員は?」
「あ?下忍が1人検査入院とか言ってたな。」
気になるか、と続く言葉を聞く前に足が動く。おい、という声に、お疲れ様でした、と返して走る。あのカカシさんが満身創痍?下忍が入院?嫌な予感がする。木ノ葉病院に着くとまっ直線に受付に向かい、うちはサスケは、と訊ねた。
「うちはさんは204号室ですね。」
サスケだった、とさーっと血の気が引く。検査中なので、と続く言葉を聞き終わる前に病棟へと向かう。204と書かれた病室のドアに手を置き力を込めようとした時、ふとサスケ以外の気配を感じた。慌てて自分の気配を潜める。
「いつもすましてやがるから、これくらいがちょうどいいってばよ。」
「ちょっと、ナルト!あんた助けて貰っておいてよくそんな口が聞けるわね。」
ナルトと呼ばれた元気な男の子の声とそれを諌める女の子の声。ナルトとサクラ、とサスケの話を思い出す。先客がいた。サスケの班員が見舞いに来ているらしい。
「うるせーよ、ウスラトンカチ。それに検査入院だ、日が暮れるまでには帰る。」
不機嫌そうな聞き慣れた声が聞こえてホッとする。今晩は帰ってくるらしい。ドアに掛けていた手を音もなく外し今来た道を振り向く。サスケの病室から少し離れた所に見知った気配を感じ顔をあげた。
「入らないの?」
サスケ、起きてるみたいだけど、と松葉杖をつき病院服を来た銀髪に話しかけられる。イビキさんの言った満身創痍という言葉が頭に浮かんだ。
「何があったんですか。Cランクであなたがここまでなること、普通ないでしょ。」
不貞腐れて訊ねる。
「ランク詐称だったんだよネ。ただの護衛だと思ったら、霧の抜け忍に狙われてた。」
「で、唯一の戦力のカカシさんとサスケに負荷が集中して、これ、ですか。」
はは、と何かを隠すように困った顔で乾いた笑いを投げられた。何かしら知られたくない事があるらしい。
「写輪眼、開眼したよ。」
誰のと言わなくても充分だった。
「そう、ですか。」
無意識にサスケの病室の方へと目を向けた。嬉しいとか哀しいとか何も浮かんで来なかったのが不思議だった。視線を戻すといつもの憎まれ口がないのを不審に思ったのか、こちらを見る半目と目が合った。
「健気だね。」
いつか聞いた言葉を再び言われたけど、声色はひどく優しかった。
「…寝てた方がいいですよ、カカシさん。治り遅くなります。」
ん、と短く返されぎこちなく病室へと戻っていく後ろ姿に、ありがとう、と呟いた。私の気配を感じて次の瞬間潜んだのを知って、自由のきかない体で見に来てくれたのかな、と都合の良い解釈をする。はっきりした声じゃなかったのに、振り返らず手をあげる姿にお礼の言葉が届いたのがわかった。