「中忍試験、受けようと思う。」
休日2人で修行しているとお昼休憩時に何気なくそう言われた。
「中忍試験?」
あぁ、とお弁当を口に運びながら答えるサスケを見つめる。
「試験中は家に帰れねぇと思う。」
一度も目線を合わせないままそう言う姿に、これは相談じゃなくて報告だったんだ、と思う。最近は修行しても私なんかじゃ物足りなくなってるのを見て見ぬ振りしていた。サスケがより一層遠く感じる。
「そっか。頑張ってね。」
こちらを窺うように見て、さんきゅ、と言われた。あっという間に空になった弁当箱に蓋をして、サスケが立ち上がり、演習場に戻っていく。
「そんなに急いで行かなくてもいいのに。」
修行にしても、イタチさんへの復讐にしても。どんどん遠くなる幼馴染の後ろ姿にぽつりと呟いた。
「治ってる。」
夕刻、傷だらけになったサスケに体得したばかりの医療忍術を披露すると、魔法でも見たかのように呟かれた。
「ふふ、痛くない?」
あぁ、と小さく呟いて、思い出したように嬉しそうな顔をする。
「中忍試験、力になれないのは分かってるけど、」
突然神妙になった私の話を黙って聞いてくれてるサスケの優しさが心地良い。
「こうやって怪我治すくらいならできるから、だから、必要になったら思い出してね。」
私にできる唯一の事だと思った。サスケは、あぁ、と短く返事をして、明日からの試験に向けた準備の手をまた動かし始めた。ひと通り終わったのか、立ち上がり私の部屋に入っていくのが見える。
「サスケ?」
私が彼の部屋に勝手に押しかける事はよくあったけど、反対はほとんどなかった。出てきたサスケはその手に私の枕を掴んでいて、*をほんのり赤らめる。
「寂しいんだろ?一緒に寝てやるよ。」
つられてこちらまで*に熱が集まる。お前、分かりやすいよな、と頭をひとつ掻き枕を並べる姿に*が緩む。
「そんなこと言って、サスケも寂しかったりしてー。」
嬉しくて茶化しながら近寄ると、調子に乗るな、と額を小突かれる。一緒に寝てもいつもは私に背を向けている癖に、今回は向かい合わせのままだった。気恥ずかしくて、目の前にある端正な顔を直視できなくて、目を伏せる。
「き、今日は、向こう向かないんだね。」
平静を装ったつもりが動揺しているのが丸わかりの声だった。
「向いてほしいのかよ。」
「違、」
不機嫌そうな声に慌てて顔を上げて否定すると、くすっと綺麗に笑われる。私ばっかりドキドキしてる。イケメンずるい。
「ちゃんと戸締まりしろよ。」
「うん。」
「知らない奴にはついて行くな。」
「え、う、うん。」
保護者みたいな事を言うサスケに、不器用に私を心配してくれてるのが分かって*が緩む。
「嬉しそうだな。」
「愛されてるなー、と思って。」
あい、と言葉を詰まらせて反対側を向こうとするサスケの手を引っ張る。
「ごめんっ、冗談だから、」
慌てて謝ると渋々と力が抜けてく姿に安堵する。
「…そういうの、誰にでもやるなよ。」
そういうの、とはどういうのだろう。とりあえず機嫌を損ねないように、分かった、と返すと困ったように微笑んで、掛け布団を私の首元までかけてくれた。その手で布団の上から腰のあたりを、早く寝ろ、と言わんばかりにとんとんと優しく叩かれる。私は赤ん坊か、と思ったけど、見たことないような優しい目に安心して、瞼が重くなった。