あっさりと終わった任務に拍子抜けしながら里に戻ると、カカシさんに召集がかかっているのが目に入る。ちらりとこちらを見る目に、にこりと笑顔を張り付けて、では私はここで、ありがとうございました、と告げると、お疲れさん、と瞬身で消えた。なんとなく気になって後を追うと、中忍試験の会場で、なーんだ教え子の試合見に来ただけか、と拍子抜けする。
「あら意外。もう1人いたのね。」
帰ろうと思ったところに声を掛けられ、ぞぞぞ、と背筋が凍えた。明らかに感じる殺気に頭で警鐘が鳴り響く。
「初めまして。音隠れの、えっと」
純真を装ってそっと深紅の眼を使う。
「大蛇丸よ。名前くらいは聞いたことあるかしら。」
名前どころか三忍として伝説になってる人だ。そうか、今は音隠れにいるのか。
「失礼しました。大蛇丸さんですね。もう生徒さんの試合は終わったんですか?」
ここまで思考が読めない人は初めてで、伝説にもなる人はやはり格が違うと冷や汗が流れた。
「くくく、賢い子ね。嫌いじゃないわ。探し物を見つけに来たんだけど、もう一つ掘り出し物を見つけたみたいね。」
探し物はサスケなんだと直感した。なにが『ちゃーんと事前に審査がある』よ。普通に厄介なのが紛れ混んでんじゃない。目の前で舌舐めずりする姿に悪寒が走る。
「?そうですか。じゃあ、その探し物は見つかったみたいですね。でもこんな平和ボケした里でも持ち出すのは不可能ですよ?」
人のいい笑顔を貼り付けて言う。全く手出ししてくる様子がないところを見ると、相手も大ごとにしたくないらしい。もしくは私が「もう一つの掘り出し物」らしい。もしくはその両方。
「ふふふ、いいわ。確かにあなたの言う通りね。だから持ち出すなんて野暮なことはしないのよ。サスケ君は必ず私を求める。力を求めてね。」
なにが「いいわ」なのかは分からなかったけど、サスケを自ら里抜けさせようと仕向けていることは分かった。
「どこかの天才上忍みたいに感情的に突っ込んで来ないのね?怖気づいたのかしら?」
明らかな挑発に乗る程私も馬鹿じゃなかった。誰だ、挑発に乗った天才上忍。
「突っ込む?だって大蛇丸さんは中忍試験でここに来たんですよね?探し物が見つかったのに、自分では持ち去らず仕掛けただけ。大ごとにしたくないでしょ?」
私の眼にチャクラが集まる。
「いいわ、ぞくぞくする。私はあなたも欲しいのよ、うちは名前。」
そう言って轆轤首みたいに首が伸びるが、私に触れる手前でぴたっと止まる。止まると分かっていても恐怖を感じるのを必死で奮い立たせる。
「まだ本当の目的、果たしていないんじゃない?」
そう言うと、ピクっと上がったままだった口角が固まる。そして止まってた首が元の状態に戻っていく。
「どういうこと、印も結ばず、どうやって、」
自分の動きが制限されたことに納得がいかないのか、苛立ちを露わにし始める。
「早く戻らないと不審に思われますよ。」
あなたに付いていた2人の暗部に、そう言うと気付いていなかったことに恥じたのか背を向け歩きだした。ハッタリでも信じさせた者勝ちだ。後で火影様に報告しなくては。気配が完全になくなってから、張り詰めていた息を吐き出しヘタリとその場に座り込んでしまう。今になって恐怖が全身を襲ってきた。しかし、彼が見つけた「探し物」が気になって精神力で立ち上がる。大蛇丸が出てきた方向へ歩を進めた。気配を消して近づくと、見知った気配を弱々しく感じる。もう一つの気配は「挑発に乗った天才上忍」だろう。
「サスケ!」
意識のないサスケに駆け寄ると、私に気付いてなかったのかクナイを向けられる。
「珍しいですね、私の気配に気づかないなんて。クナイ向ける相手は私じゃないでしょ。」
睨んでやると気まずそうにその手を下ろした。熱に魘されるその額に手を翳しチャクラを練ると弾き返された。
「いっ。何これ。」
見たことのない現象に動揺する。肩に見覚えのない印があって、突っ立っている影に視線を向けた。
「封印式だ。心配いらないよ。」
サスケの額には汗が滲んでいる。どこが心配いらないよなんだ。苛立ちが募る。
「大蛇丸がつけたんですか。」
目をカッと見開く姿に肯定だと受け取る。
「知ってたのか。」
「さっきすれ違いました。」
すれ違いって、と驚く声を尻目にサスケを抱き寄せると苦しそうに声を上げた。
「警備のしっかりした病室、ないんですか?」
だからこんなところに放置を?、と嫌味を言うと、あのね、さっき封印し終わったばかりなんだけど、と不満そうに言われた。
「話した感じだと殺すつもりはなさそうでしたけど、用心するに越したことはないですよね。」
「話した感じって?」
「?大蛇丸ですよ。」
「?!お前、話したのか?」
無傷な私を凝視する。
「カカシさん、私と任務行ったことないんでしたっけ。」
嫌味を言いながらサスケを背負おうとしていると、俺が運ぶから、と優しく言われた。サスケも辛そうだったので素直にお願いして、病室に運び暗部2人の警備が付いた。病室は狭いけど、装置も警備もしっかりついている。
「…2人だけですか。」
「あのね、2人でも厳重警戒レベルだよ。暗部って誰でもなれる訳じゃないんだけど。」
文句を言うと、外にいる暗部に配慮してか、そう返された。
「大蛇丸、」
名前を出すとキッと睨まれる。
「…サスケを襲った奴が言ってましたよ。」
「なんて。」
「どこかの天才上忍みたいに感情的に突っ込んで来ないのね?って。」
虫の居所の悪そうな顔をする。
「反省した天才上忍なら理性的にここで警備してくれますよね?」
笑顔を張り付けてそう言うと、ため息を吐かれた。ちょっと言い過ぎたかな。
「私が手を出されなかったのは、私の実力じゃありませんよ。それに、私じゃ勝ち目ありません。」
ご丁寧にフォローありがと、と返された。