11. 迫り来る脅威

ノックする音が響く。入れ、と声をかけると小さな影が、失礼します、と初々しい様子で言った。

「火影様、どうされるおつもりですか。」
「主語を言わんか。」
「大蛇丸、ですよ。」

キセルから口を離して煙を吐き出す。まぁ座れ、と不機嫌そうに逸る少女を宥めて椅子に座らせる。

「カカシから報告は受けた。サスケを狙って中忍試験に潜り込んでいるらしいの。」
「それだけじゃありません。」
「なんじゃ。」
「もっと大きな物を仕掛けてくると思います。」

大きな物、か、と言う声にすみません、と謝られる。

「自分の命が惜しくてあまり踏み込んだところまで引き出せませんでした。」

その言葉に内心驚く。わざわざ嘘をつく必要もない、彼女は伝説の三忍と呼ばれた抜け忍と話して無傷で帰ってきたようだった。

「あやつに会ったのか。」
「はい。うちはの血を狙っていたようで、元々サスケにも私にも危害を加えるつもりはないようでした。」
「そうか。」

謙遜なのか自分が特に何かをしたのではない、と強調する。

「サスケを自分から里抜けするように仕向けるための接触だったようです。」
「ふむ。」
「でも、それはオプションみたいなもので、もっと大きな本当の目的があって、それがあるから内密に動いているようでした。」

窓の外を眺めながら白い息を吐き出す。1つの可能性が頭に浮かぶ。それを知ってから知らずか、少女は続ける。

「火影様、大蛇丸が本気で攻め込んで来たら、太刀打ちできる忍なんて、いるんでしょうか。」

不安が声色にも現れていた。幼い頃から任務に就かせていたとはいえ、まだ十分すぎるほど子供だった。

「サスケを里抜けしないよう、止めることは、できるんでしょうか。」

ぷかぷかと煙が室内を漂う。

「私が、大蛇丸に誘き出されてしまう日は、来るのでしょうか。」

自分のことよりうちはの片割れの心配をした彼女は、もうこれ以上は抱えきれないだろう表情だった。自分が必要となるのは片割れがいなくなったときだという語り口だった。

「里のことはお主が心配する事ではない。儂の仕事じゃ。」
「…はい。」

消え入るように小さい返事が聞こえた。

「サスケのことはカカシが目を光らせておる。あやつは鼻がきく。」

お主もそれは知っておるじゃろう、と語りかけると不安そうに頷いた。

「お主が大蛇丸に誘き出される前に、サスケを助け出してやれ。」

一層不安そうにこちらを見てくる少女を安心させようと笑いかける。表情は固いままだが、必死に微笑んでお辞儀をして部屋を出て行った。その気配が完全に遠ざかったのを確認してから、口を開く。

「強い子じゃの、あやつは。」
「そうですね。」

話しかけられてそいつも口を開いた。

「厄介な事になりそうじゃ。サスケのこと、頼んだぞ、カカシよ。」
「御意。」

瞬身で姿が見えなくなったのを確認して、鈍る体を動かさなければと溜息を吐いた。