サスケに貰ったチケットは受験者の関係者専用エリアのものだったらしく、柵の真ん前という超VIP席だった。生憎一緒に観にくるような友達はいなかったので1人サスケの出番を待つ。「うちは」の試合とあって会場のボルテージは上がるのにサスケは一向に現れない。運営側が配慮したのか試合が後回しになった。第1試合はサスケの班員の試合で、へー、これがナルトくんか、と初めて目にした姿をぼんやりと眺めた。次の試合も木ノ葉の下忍らしいけど、全く知らない人だった。
「よーガキ、久しぶりだな。」
そんな悪い言葉遣いをする人は1人しか知らなかったので顔を思い浮かべながら振り返る。
「イビキさんもいらしてたんですね。ご無沙汰しております。」
豪快に笑いながら寄って来た強面な大男に挨拶する。
「凹んでるかと思ったけど、もう大丈夫そうだな。」
そう言ってガシガシと頭を撫でられる。せっかくセットしてきたのに台無しだ。
「ご心配おかけしました。」
「誰でもあることだ、気にするなよ。」
今日はどうした、1人か、と問われ、幼馴染の試合を見にきました、と答える。
「まだ来てねーのか、お前のサスケくん。」
カカシの遅刻癖移ってんじゃねーのか、とガハガハと言う。お前のサスケくん。響きは素敵だけど、恥ずかしい。
「そういえば、カカシさんも見てないですね。」
「ふ、カッコいい姿拝んでやれ。」
言われなくとも、と心の中で返事してお辞儀をし見送った。乱れた髪を応急処置したところで、会場に風が吹く。ド派手に登場したのは噂の幼馴染だった。対戦相手が来るまでの間にチラリと目線を上げたサスケと目があった気がして、手を振った。無敵な表情で口角を上げた。格好良かった。遠くで黄色い声が聞こえて、そう思ったのは私だけじゃなかったのか、と少し恥ずかしかった。*の熱を冷まそうと目線を逸らすと、観客席に登ってきたカカシさんと目が合い会釈をした。カカシさんはいつも通り片手をあげると私の少し後ろにしゃがみ込んだ。
「遅くなっちゃったから心配した?」
そちらに視線を向けると、会場に視線を向けるようジェスチャーされたので従う。サスケの試合が始まった。
「心配しましたけど、信じてたから。」
「そう。」
本当、サスケ命だね、と茶化される。カカシさんの憎まれ口も気にならないぐらい、目の前のサスケに釘付けだった。
「元気そうで何より。」
「ご心配おかけしました。」
目線を逸らさずそう言うと、はは、と乾いた笑いを投げかけて、じゃ俺は不安そうな教え子を宥めてくるよ、と言って立ち上がった。
「カカシさん、ありがとう。」
目も向けず言う私に、どーいたしまして、と優しく告げ気配が遠ざかっていくのを感じた。会場ではサスケが壁に張り付いて間合いを取っている。少し見えづらくて写輪眼を使うと、サスケの写輪眼と目線が合った。やっぱり私を見てたのか、と恥ずかしくなって、カカシさん知ってたから気を遣ってくれたのかな、なんて都合よく解釈する。次の瞬間、チッチッチッと音がしてサスケの手にチャクラが目に見える形で集まって、そのまま砂の塊に突っ込んだ。サスケが引き抜いた手につられて出てきた人の物じゃない手に、ぞぞっと背筋が冷える。
「サスケ、」
不安で小さく声を漏らす。目の前に白い羽が降ってきた。羽?何これ、と思って目で追った瞬間、瞼が重くなる。これ幻術、と思うも何もできず、そのまま意識を失った。