相変わらず修行漬けな毎日を送るサスケは日に日に新しい傷を作って帰ってくる。診せて、と頼んでも、寝れば治る、と拒まれるので寝入っている間にそっと治療する。まぁ、だから寝れば治ると言われてしまうんだけど。こんなになるまで修行しなくても、と思うのに本人には明らかに焦りが見てとれるのだからどうしようもない。今日も、カカシと修行してくる、と出かけてしまったサスケに、心配で押し潰されそうになり、堪らず気分転換に甘味屋へと足を向けた。お団子を頼んで頬張っていると、ふと懐かしいような気配を感じる。これ、誰だったっけ。
「お茶のお代わりいるかい?」
「ありがとうございます、いただきます。」
店員さんに声を掛けられた際にちらり、と店内を見回すも知り合いは特にいない。気のせいか、とお団子を頬張る私の横を通って店員さんが後ろの席にお団子を運ぶ。ピラミットの形になって盛られたそれに、幼い頃にサスケとイタチさんと一緒に寄った甘味屋で同じようなものを頼んだのを思い出した。懐かしいな。
「あまり食べるとお身体にさわりますよ、イタチさん。」
「これくらいなら平気だ。」
ヒソヒソと話す声が聞こえた。イタチさん?その名前に一瞬手が止まる。ごくっと最後の一口を飲み込んだ。
「ご馳走さまでしたー!」
声を掛けて店を出る時にチラリと後ろの客のテーブルを写輪眼で見遣る。同じ眼で返された。
「…イタチさん、」
思わず声に出してしまって、しまった、と口に手を当てる。ふ、と吐き出すように笑われ、変わってないなと思ったのも束の間、イタチさんの向かいに座っていた大柄な人がふり向こうとするのが見えた。まずい。咄嗟に瞬身を使い場所を変えた。
「イタチさんだった。」
誰もいない路地に着いてぽろっと口にした。
「久しぶりだな、名前。」
びくっと背を震わせて声がした方を振り向くと、先程団子を手に優しく笑ったイタチさん本人だった。必死にもう1人の気配を探るが近くにはいなさそうだった。目の前のイタチさん自体が分身だった。
「お久しぶりです。」
お元気そうで何よりです、と続けると、お前もな、と綺麗に微笑む。
「サスケですか?」
単刀直入に窺えば、いや、と短く返される。こういう所は本当に兄弟だと思う。
「お前は憎んでいないんだな。」
お前は、というのはサスケとの対比だというのは即座に分かった。
「んー、むしろ、サスケといれる時間が長くなって、ラッキー?なんて、」
ふ、と笑われる。
「サスケは、お前が幼い時から任務をこなしていたと知ったら、どう思うだろうな。」
額当ての付いていない私を見てそう言う。
「そんなこと、誰にも言わせませんよ。」
「自分より先に才能が開花して、医療忍術まで使える幼馴染、嫉妬するかもな。」
嫌なところを突いてくる。なんで医療忍術使えるの知ってるんだか、天才には敵わないな、と自嘲する。
「イタチさん、お身体は大丈夫なんですか?」
びくっ、とらしからず体を揺らす姿にこれは重症だな、と思う。
「何のことだ。」
「私なら、治せるかもしれませんよ?」
なのに、そんな意地悪言ってていいんですか?と続けると、鬼鮫との会話を聞いたのか、と納得したように呟く。うーん、治らない病気らしい。
「お前は賢い。どこまで知っているのかも計り知れん。」
それは病気の事だろうか、イタチさんが今いる組織の事なんだろうか。
「ただ、俺の邪魔をするなら、あいつの邪魔をするなら、情けはかけない。」
どちらも外れ。うちはの悲劇の真相か。
「そんな野暮なことはしませんよ。私はただサスケと居たいだけだから。」
安心してください、と続けると、そうか、と拍子抜けしたような声が聞こえてくる。その表情が昔と重なってつい弱音を吐き出していた。
「大蛇丸が、」
「?」
「サスケに呪印をつけたんです。」
「!」
「サスケ君は必ず私を求めるって。それって、サスケ自身の意思で里抜けさせるって事?」
みっともなく震えた声にイタチさんは何も言わない。
「サスケ、大丈夫ですよね?」
誰にも言えなかった不安を零すと、自然と涙が溢れる。はぁ、とため息を吐き、お前は仮にも抜け忍を前に緊張感はないのか、と諭される。
「だって、相談した火影様は死んじゃうし、サスケ本人に言える訳ないし、私が、」
引き止めれるか分からない、とだんだん窄む声に反して、呼吸は上がる。涙でぐちゃぐちゃの顔で、人前で泣くのは久しぶりだな、と恥ずかしくなるけど止められない。
「お前が気にする事じゃない。」
突き放すように言われた言葉に膝から崩れ落ちる。過呼吸気味に、声を上げて泣く。みっともない。
「名前、サスケをそんなに想ってくれて、ありがとう。」
その言葉に思わず顔を上げると深紅の眼が近くにあって、慌てて自分も同じ眼にすると、その人は眉を下げて距離を取った。遠くなる意識に、お前も苦労するな、と同情する声が木霊した。