気付けば病院だった。パリーン、と何かが破れる音がして目を開けると看護師さんと目があった。身体を起こすと自分のものとは思えないくらい重かった。
「あ、あ、」
「?」
「せんせー!!」
ゾンビでも見たかのような反応に苦笑しつつ、重い体で伸びをした。何だったんだろう。治ったぁ*?、という物騒な声をあげてどすどすと誰かが近寄ってくる。ガラガラと派手に音を立てて病室のドアが開いて、綺麗なお姉さんが無遠慮に入ってきた。ムスッとした顔で此方を見て、ぽかんと口を開ける。
「あの、」
「どうやった。」
「はい?」
「お前はうちはイタチに瞳術を掛けられてたんだ。他にも2名同様の症状の奴がいたが自力で目覚めた奴はいない。」
きっと1人はサスケだ。
「さ、さぁ。私はただ目覚めたら此処に、」
「私がこの目で診た。無限幻術にかけられて、自分では抜け出せない。お前も、あとの2人もそうだった。」
「私だけ、完全にかかってなかった、とかですかね。」
へらっと言うとじとっと怪しまれる。
「他の2人は?」
訊ねてから、あ、余計怪しまれるかな、と反省する。
「なぜ気にする。」
「ふ、2人とも、もう助かったなら、私を助ける分のチャクラ、温存できてラッキー、って」
思えませんか、と続く言葉に、うるさい、と怒鳴られる。怖い。
「まぁ、たしかに、お前の言うことも一理ある。助かって何よりだ。ったく、1週間は絶対安静だぞ。」
そう言って来た時よりも雑にドアを閉めて出て行った。サスケの病室を知りたかったけど、さすがに聞けなかった。きょろきょろと見渡すと自分の服が丁寧に畳まれて置いてあったので、動かしづらい体で着替え、部屋をそっと抜け出す。体は重いけど、このぐらいなら動かせる、と思った。幸い微かにサスケの気配を感じて辿る。長い長い廊下を抜けて病室の前まで来てみると先客はいないようだった。コンコンコン、とノックしてみる。
「サスケ?」
それはそれは重たいドアを気合いで押し開けて中に入ると、寝息を立てて眠るサスケの姿が目に入った。ベッド脇の丸椅子に座って、透き通るような白さの*に手を当てる。体温が伝わってきてホッとする。
「よかった。」
安堵して、体が重くなっていくのを感じる。やっぱり安静にしてなきゃだめだったかな。サスケのベッドに突っ伏して意識を手放した。
「名前。」
自分の名が呼ばれるのを聞いて意識が戻ってくる。サスケの病室で寝ちゃったんだった。頭を撫でられる感覚に心地よさを感じる。目をパチリと開けると、サスケが無表情に私の頭を撫でていた。
「サスケ!」
嬉しくて頭を上げると、サスケは手を下ろした。
「よかった、目、覚めたんだね。」
何も言わないサスケに違和感を覚えながらも、よかった、ともう一度言う。
「お前、会ったか。」
誰にとは言われなくても、イタチさんのことだと分かった。ぎろりと鋭い目がこちらを向く。サスケに睨まれたのは初めてだった。
「サスケ?」
「あいつが、お前が大蛇丸に会ったって言ってた。」
イタチさんのバカ。なんでそんな事サスケに言うの。
「大蛇丸から俺を貰うって言われて不安がってたって。」
「サスケ、」
「俺は、お前に守ってくれなんて、頼んでねー。」
鋭く強く言われて、ガラガラと積み上げてきたものが崩れていく音が聞こえた。
「滑稽だったか?呪印つけられてボロボロで逃げてきた俺と違って、話をして無傷で帰ってきたんだもんな。」
「違、」
「あいつ、お前にも月読かけたって言ってたけど、その格好見ると、俺より先に目覚めたみたいだな。」
自分で解いたのか?、とさっき着替えたばかりの服を見て嘲笑うように問われる。
「違うよ、サスケ、」
「もういい。出て行ってくれ。」
顔をぷい、と窓の方へ向けられた。もう目は合わない。
「お願い、聞いて、サスケ。」
「お前、うざい。失せろ。」
目も見ないでそう言ったサスケに、時間が止まったような感覚がした。ガラガラ、とドアが開いてやって来たさっきの豪快なお姉さんが、目覚めたか、調子はどうだ、とサスケに訊ねる。あぁ、と答えるサスケに、ふ、それなら構わん、と言って私を見て驚く。
「お前、こんなとこに居たのか、バカモン。」
茫然自失の私に構わず腕を掴んで立ち上がらせる。
「医療スタッフ総出で探してたんだぞ。絶対安静って言ったの忘れたのか。目覚めてその足で出歩く奴があるか。」
強い力で腕を掴まれドアの方へ連れて行かれる。上手く動かせない体の所為で足がもつれる。
「その状態でよくここまで来れたな、感心するよ、全く。」
「名前、」
「騒がしくしてすまなかったな。ちょっとコイツ病室に戻してくる。お前も絶対安静だぞ。」
サスケの声が小さく私の名前を呼んだけど、お姉さんの豪快な声がかき消した。私は動かしづらい足を必死に動かして大人しく病室まで連れ戻された。